「CKDを知っていますか?」
3月第2週の木曜日は世界腎臓デー。そして世界腎臓デーはCKDという病気を世界中に広めるために制定された記念日、ということは先日このコーナーでもお伝えしました。
こちらでも紹介していますが、CKDとは、Chronic Kidney Diseaseの略称で、日本語では「慢性腎臓病」と訳されます。「慢性」+「腎臓病」という語感が親しみやすいため、昔からあった病気と誤解されがちですが、この病名は2002年にアメリカで生まれた、病気の概念(考え方)※1です。
といっても、腎臓病は昔からあったわけで、新種の病気が突然生まれたわけではありません。逆に慢性に進行する腎臓の疾患は数多くあり、医師ですら、専門外であればわかり難いと言われていました。
そこで、各種さまざまな腎臓病を、主にたんぱく尿と腎機能を指標として取りまとめ、新たにCKDという1つの病名として定義しなおした、というのが、ことの経緯です。よって、CKDという病名は腎臓専門医のためではなく、むしろ一般の内科医や患者さんのためにつくられた病名になります※2。
CKD誕生の狙いは、腎臓病をわかりやすく管理して、透析患者の増加を抑制すること。また、腎臓と関わりが深く、致死性の高い心臓や血管の合併症(CVD=心血管イベント)を抑制することにあります。不治の病とも言われていた腎臓病の治療法が発達し、早期に治療を受けられれば、進行を抑制して透析や腎臓移植に至る前にとどめることも可能であることが判明してきたこともCKD誕生に一役買ったといわれています。
※1 正確にはCKDは「病気」ではなく「症候群」とすべきですが、わかりやすく説明するためにここでは病気と表記しています。
※2 日本腎臓学会編 『CKD診療ガイド2009』 槇野博史「改訂によせて」より
上記で説明したとおり、CKDの新しさは、さまざまな種類の腎臓病が、CKDという1つの病名にまとまったことにあります。新薬の発見のように、直接腎臓を守るための治療法に大きな前進があったというわけではありません。
しかし、一般の内科医(町の開業医さんなどをイメージして下さい)と、腎臓専門医をCKDという1つの病名でつなぎ、連携して患者さんを診るためのハードルを下げた、という点に注目すれば、新薬の発見を上回る治療上の前進ではないか、と期待されています。
一般の内科医は、地域の健康を守る責任をもち、日常の診療で多くの患者さんと接し、数多くの貴重な経験を積んでいらっしゃいますが、必ずしも腎臓にだけ大きな時間を割けるわけではありません。そのため、腎臓病の患者さんを発見しても、1人では効果的に治療を行うことが難しい部分があります。
一方で、腎臓専門医は腎臓病の治療に特別高い見識を持ちますが、全国で約3000人と少なく、国内1330万人ともされるCKD患者さんを発見・治療するにはとても足りません。
そこで、一般の内科医が腎臓専門医と緊密に連携することによって、患者さんの効率的な発見と効果的な治療提供の、双方を実現することができます。こうした連携のシーンで、一般の内科医と腎臓専門医の認識をスムーズに連結する共通言語となるのがCKDなのです。
新たな国民病、とも呼ばれるCKDに効果的な医療を実施するためには、こうした病診連携がとても重要です。行政もこのことに重きを置いており、2008年からはじまった慢性腎臓病に関する厚生労働省の大型研究(FROM-J)も、地域での病診連携の成果を測ることが研究の主眼となっています。
厚生労働省「腎疾患重症化予防のための戦略研究」(FROM-J)
http://fromj.jp/

