「腎臓病の大切な指標-GFRについて」
今年の1月6日に、東京都の福祉保健局が新しいWEBサイトを開設しました。「ほっとけないぞ!CKD(慢性腎臓病)」というサイトで、CKDの予防や早期発見・進行防止等を目的として情報提供を行っています。都のような大きな自治体が一般向けにCKDの情報提供をはじめたことは、腎臓病対策の進展という観点から、高く評価されるべきだと考えられます。
さて、このサイトで目玉になっているのが、腎機能の状態を調べることができるGFRのチェックツールです。「腎臓病なんでもサイト」でも同じ機能をもったチェックシートがありますので、なじみ深いものだと思いますが、そもそもGFRとは一体なんでしょうか?
GFRは、Glomerular Filtration Rateの略称。Golomerularは腎臓の中にある糸球体という組織、Filtration Rateはろ過量(値)。つまり、腎臓が一定の時間当たり、どれくらいの血液をろ過できているかを教えてくれる数値です。この数値が高ければ、その人の腎臓はたくさんの血液をきれいにする能力を持った健康な腎臓、この数値が低ければ、血液をきれいにする能力が低くなっている腎臓、ということになります。このGFRの値を維持し、悪化させないことこそ、CKD治療の肝になります。
GFRを簡単に算出できるようにすべく、考案されたのがeGFR(estimated GFR=推算糸球体ろ過量)です。日常診療でよく使われていた血清クレアチニン値よりも精度が高く、性別×年齢×血清クレアチニン値を掛け合わせる簡単な計算式で算出できるため、各所で利用されています。本「なんでもサイト」の腎機能チェックや東京都の新サイトのチェックツールもこのeGFRの計算式を利用しています。
・東京都 福祉保健局 「ほっとけないぞ!CKD(慢性腎臓病)」
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shippei/ckd/index.html
・「腎臓病なんでもサイト」 腎機能チェック
http://www.kidneydirections.ne.jp/kidney_tests/check.html
さて、腎臓専門医向けのCKD治療の最新版ガイドライン『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2009』では、GFRについて、以下のように表現されています。
② 日常診療において日本人のGFRは以下の推算式で算出する( 推算GFR,eGFR)
eGFR(mL/分/1.73 m2)=194×Cr-1.094×Age-0.287 (女性は×0.739)
※『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2009』(社団法人 日本腎臓学会編) P.1
このガイドラインでは、本来のGFRは「イヌリンクリアランス」という検査で計測すべきですが、日常診療では「eGFR」で代用すればよい、ということを言っています。
イヌリンクリアランスは、イヌリンという人体に無害でかつ体内に蓄積されない物質を利用した、世界標準のGFR計測法です。しかし、イヌリンは体内にない物質のため、静脈注射をして投与し、尿道カテーテルを利用することもあるなど、複雑な検査工程が必要で、患者さんと医療者の双方に負担がかかります。そのため、日常の診療で実施することが難しい検査です。そこで、血液検査でわかる血清クレアチニン値と性別、年齢を使って簡単に算出できるeGFRを腎機能の目安としてよい、ということです。
もちろん、正確な腎機能を測定しなければならないときには、上記のイヌリンクリアランスやクレアチニンクリアランスといった検査を活用して、できるだけ正確に患者さんの腎機能を評価しましょう、ということがCKD診療ガイドラインで推奨されています。
