- 腎臓移植について
腎臓移植は、末期腎不全で腎臓が機能しなくなった方に他の方の腎臓を移植し、その人の腎臓として働くようにさせる医療です。腎臓移植は慢性腎不全の唯一の根治的治療であり、これが成功すれば免疫抑制剤を飲む以外は普通の人と同じように生活することができます。
現在、日本には透析患者さんが27万5千人いる一方、腎臓移植を受けている方は、年間約1000人ほどで、日本ではまだまだ標準化された治療とは言いにくいですが、アメリカでは年間15000件ほど、移植の実績があり、海外では珍しい治療ではありません。
- 二つの腎臓移植
- 腎臓移植には肉親や配偶者から腎臓を提供してもらう生体腎臓移植と、亡くなった方から腎臓をいただく献腎臓移植 (死体腎臓移植 )があります。
生体腎臓移植 は親、子、兄弟などの血縁者、または配偶者などのドナー(腎臓を提供する人)から腎臓を1個取り出してレシピエント(移植を受ける人)に移植します。家族による腎臓提供は、あくまでも自発的な善意に基づくものであり、強制や圧力はタブーです。健康な人の体から腎臓を取り出すという特殊な医療ですから、よく考えて慎重に決断する必要があります。
一方、献腎臓移植 を受けるには、事前に日本臓器移植ネットワークに献腎臓移植 希望の登録をしておく必要があります。わが国では、献腎臓移植 希望者に比べて死体腎の提供数が少ないことから、登録したからといってすぐに移植を受けられるわけではありません(献腎臓移植 の登録者12000人のうち、実際に移植を受けた方は200名ほどです*)。
*腎臓移植の実態については日本移植学会のHPのこちらをご参照ください - 移植された腎臓が拒絶反応を起こさずに十分機能するためには、ドナーとレシピエントの適合性があることが重要になります。腎臓移植の場合には、HLAと呼ばれる白血球の型があっているほど、移植の成績がよいとされています。臓器の提供があった場合、登録者の中から、血液型一致などの条件を満たした上で、このHLAの型の適合度と、ネットワークに登録してからの長さをポイント化し、ポイントの高い人がレシピエントに選ばれます。
移植された腎臓が機能する率を生着率(せいちゃくりつ)といいますが、移植後5年の生着率は生体腎臓移植 で約80%、献腎臓移植 で約70%となっています。 *腎臓移植の生着率については日本移植学会のHPのこちらをご参照ください
- ドナーとレシピエントの条件について
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- レシピエントに移植手術に耐えられる体力があること。
- ドナーが健康で、腎臓機能に問題がないこと。
- 双方に悪性腫瘍、感染症などの病気がないこと。
- 生体腎臓移植 の場合、ドナー、レシピエントの年齢についての制限はありませんが、高齢になるほど条件は悪くなるので、一般には70歳ぐらいまでが目安とされます。
- ドナーとレシピエントの血液型は、従来は適合していることが条件でしたが、移植医療の進歩で、不適合の場合でも移植が可能になっています。
- 腎臓移植の手順(生体腎臓移植 の場合)
1. 腎臓移植の実施病院へ
現在治療を受けている病院の紹介状を持って、ドナー候補の方と一緒に腎臓移植を実施する病院を受診します。
2. 意思確認
医師や移植コーディネーターから移植について十分な説明を受け、移植についての意思を確認します。
3. 検査
移植に対する意思が確認された上で、ドナーとレシピエントに必要な検査、診察を行います。
4. 手術
検査の結果、医学的な問題がなければ、移植が行われることになります。ドナーから提供された腎臓は、右下腹部の骨盤腔内に移植されます。手術は通例3~4時間で終わります。
| A. | 腎臓移植では、ドナーの片側の腎臓を摘出して、レシピエントに移植しますが、通常は機能のよいほうの腎臓を残します。 |
| B. | ドナーからの腎臓摘出手術に内視鏡を使用することもあります。高度な技術を要しますが、従来より小さい傷ですみ、入院期間も短縮されます。 |
| C. | ドナーから摘出した腎臓はレシピエントの下腹部に、血管と尿管を吻合して移植します。レシピエント自身の腎臓は通常、そのままにしておきます。 |
5. 腎臓移植後
生体腎臓移植 では、手術中か手術直後から腎臓が働いて尿が出始めます(献腎臓移植 の場合には腎臓を摘出してから移植されるまでに時間がかかっているため、必ずしも移植直後から尿が出るとは限りません。そのため、尿が出るまでの期間は透析療法を受けることがあります)。
手術後1~2ヵ月は入院が必要です。退院後の通院頻度は、移植後3~4ヵ月は週に1~2回、6ヵ月ごろまでは2週間に1回、6ヵ月以降は月に1回程度となります。
手術後は、移植した腎臓が拒絶反応を起こさないように管理することが重要です。拒絶反応を抑えるために、免疫抑制剤を飲み続ける必要があります。
6. 免疫抑制剤
免疫抑制剤は1980年代以降に強力な薬剤が普及し、医療技術の進歩とあいまって、移植成績は飛躍的に向上しています。免疫抑制剤には多くの種類があり、通常複数の薬を併せて使います。
免疫抑制剤は免疫反応を抑える働きをしますから、逆に感染症にかかりやすくなる危険があり、肺炎などが問題になります。また免疫抑制剤自体の副作用もあるので、使用量が多すぎてもいけません。このバランスを取ることが非常に大切で、血中の薬物濃度を調べながら適切な投薬量を決めたりします。
移植後、3カ月をすぎると安定期に入り、免疫抑制剤の使用量は減少します。さらに年月がたつと、より少量ですむようになります。
7. 費用
なお、国内で腎臓移植を受ける場合は、多くの場合、医療保険のほか、特定疾病療養制度、更正医療などの対象となるため、医療費に関してはほとんど費用はかかりません。 さらに詳しい情報は、日本臓器移植ネットワークのホームページへ
大阪大学大学院先端移植基盤医療学 准教授 猪阪 善隆先生

