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患者さんの体験談~一病息災~

第20回

ジャン・ルイ・クレモンドさん(1950年生まれ)
HD

 

「腹膜透析、それは自由への切符」
―腹膜透析患者さんの大西洋ヨット単独横断

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ジャン・ルイ・クレモンドさん
腎不全患者さん初の大きなチャレンジ

2009年11月、ジャン・ルイ・クレモンドさん(59歳)は、これまで腎不全患者さんの誰も成し遂げたことのない、大西洋ヨット単独横断という大きなチャレンジに臨もうとしていました。アフリカ大陸の北西沿岸沖のカナリア諸島から、カリブ諸島のマルティニーク島までを3~4週間かけて横断するのです。大西洋横断は、それ自体とても大きな挑戦ですが、透析治療を受けている腎不全患者さんにとってはなおさらです。

ジャン・ルイさんは、昔からずっとセーリングが大好きでした。子どもの頃は、サマーキャンプでよくボートに乗り、のちにクレモンド家では夏休みにヨットを借りて旅行することが恒例となりました。とくに黒海へ好んでよく行きました。そして、彼はついに自分のボート「ハルマッタン号」を手に入れ、その全長15メートルの中古のヨットを9年かけて改造しました。ジャン・ルイさんは常に精力的で、かつては兵役に就き、その後結婚し、子どもができ、孫もできました。また、1997年には自ら不動産業を立ち上げるなど、仕事においても成功を収めてきました。この頃、自分の尿道に先天性の異常があり、腎臓に負担がかかっていることを知りました。二度、手術を受けましたが、2009年8月に腎不全となり、透析治療を始めることとなったのです。

待ち望んでいた、南米のパタゴニアからホーン岬までのヨットの旅を、透析治療のため、中止せざるをえませんでした。もう二度とヨットに乗れないのではないかという思いがよぎりました。しかし、携行式の腹膜透析という方法があることを知り、ヨットやほかの活動もつづけられることがわかったとたん、ジャン・ルイさんは大西洋横断の計画を立て始めたのです。

腹膜透析、それは自由への切符

ジャン・ルイさんが大西洋横断を決意したのは、ヨット好きが高じただけではありません。同じ腎不全とともに生きる患者さんに対して、腎不全は決して死刑宣告でなく、活動的で充実した生活をつづけるための治療法があることを、身をもって証明したかったからです。それは腹膜透析(PD)という治療法で、1970年代後半、バクスターが開発、製品化に成功し、患者さん自らが自宅などで操作を行うことを可能にした在宅透析療法です。

「身近に腹膜透析の情報が少なく、もう少しで血液透析を選ぶところでした。血液透析を選んでいたら、一日おきに通院しなければならないので、治療に拘束されてしまっていたでしょう。もっと身近に腹膜透析の情報があるといいですね。腹膜透析は、計画的に行えば、以前とほとんど変わらない、自由な生活を送ることができるのですから」と、ジャン・ルイさん。

ジャン・ルイさんの場合、1日3回、お腹に埋め込んだカテーテルから、お腹に透析液を入れます。腹膜が天然のフィルターとなり、透析液に尿毒素などの老廃物を吸収します。数時間後、老廃物を吸収したお腹の中の透析液を排液します。

このように、1日数回、患者さんが透析液の交換を手動で行う方法を連続携行式腹膜透析(CAPD)といいます。一方、就寝中、器械を使って透析液の交換を自動的に行う方法を自動腹膜透析(APD)といいます。

「人生で最高に幸せなひととき」

出航地のカナリア諸島のランサローテ島では、腹膜透析液を載せたパレットがジャン・ルイさんを待っていました。それをすべてヨットに載せて、ジャン・ルイさんは出発しました。航海中、彼は医療チームと常に連絡をとり、また、気象予報に基づいた航路調整のサポートを受けました。

航海中、治療には何の問題もありませんでした。静かで孤独なヨットの旅は、ジャン・ルイさんにさまざまなことを考える時間をくれました。出発から23日後、マルティニーク島に到着したジャン・ルイさんを待っていたのは熱烈な歓迎でした。

「とてもうれしいです。人生で最高に幸せなひとときです」と、大西洋横断を成し遂げた喜びに輝く笑顔。

同じ腎不全患者さんに、自分の冒険のことを知ってほしい、そして、透析治療の選択肢として、拘束の少ない携行式の腹膜透析があることを知ってほしいと、ジャン・ルイさんは願っています。

「腹膜透析のおかげで、私の人生を、私の夢を生きることができます」と、ジャン・ルイさん。
彼は、早くも次のヨット航海を計画中です。挑戦することに生きがいを感じているジャン・ルイさんにとって、大西洋横断に勝る挑戦はそう簡単にはないかもしれません。

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