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患者さんの体験談~一病息災~

第22回

金澤 晃さん(かなざわ あきら:1962年生まれ、大学院修士課程2年生)
HD

 

「無理をしなくてもいい。“なんとなく生きていけば”、そのうち上向くこともありますから」

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金澤 晃さん 25歳で血液透析(HD)を導入。グラフィックデザイナーとして活躍してきたが、40代になり臨床心理士を目指し、仕事を続けながら、大学の2部に入学。2009年大学院に進学し、現在は学業に専念している。
趣味はトロンボーンと碁。トロンボーンは時間の余裕がなくなかなか練習できずにいるが、碁は人生3回目のブームがきており、修士論文に行き詰まるとインターネットの碁のサイトに逃避しているとのこと。
自身の経験から臨床心理士を目指す

金澤晃さんは現在、大学院修士課程2年生。臨床心理士を目指して勉強の日々を送っています。臨床心理士とは、臨床心理学に基づく知識や技術を用いて、心の問題にアプローチする“心の専門家”。文部科学省認可の財団法人日本臨床心理士資格認定協会が指定する大学院等を修了した後、同協会が実施する試験を受け合格しなくてはなりません。長期にわたる勉強、訓練が必要とされます。「長年透析を受けてきて、心の支援の重要性を実感しました。自分もそうだったから、他にも同じ思いの方がたくさんいらっしゃるはず。そういう方の力になりたいと思ったんです」と金澤さんは臨床心理士を目指した理由を語ります。

最初の異変は小学校入学前。発熱を繰り返し、血尿が出たそうです。小学校5年生の時には半年ほど入院しましたが、中学、高校時代は通院で安定した状態を維持していました。高校卒業後上京、グラフィックデザインの専門学校に入り、その後デザイン会社に就職。忙しい日々のせいか、病状は悪化の一途をたどりますが、「あまり実感はありませんでした」と金澤さん。そんなある日、起き上がれないほど体調を崩し、即入院、1週間後には透析導入となりました。

「導入後2~3年は “蜜月期”だと思います。体調はよくなるし、食事もおいしくなる。医療関係者も気を配ってくれて、透析を受けるのが楽しかったですね。でも、それを過ぎると、だんだん現実が見えてきて落ち込む時期がくるんです」。金澤さんは精神世界に関する様々な本を読み、やがて心理学に興味を持ち始めます。「単なる精神論ではなく、体系的にきちんと人間の心理を勉強したいと思うようになりました。そして、臨床心理士という存在を知ったんです」。「論文によると透析は2年を過ぎると“安定期”とされます。医療関係者も『この患者さんはもう大丈夫』と見るようです。しかし、本当にそうなのか。20年、30年続けていくものに対し、2年で安定期としていいのかと疑問に思いました。生涯にわたり、(落ち込んだり、前向きになったり)気分の波があるはず。そんな心の状態を理解してくれる存在が必要だと感じました」。

自分の気持ちを言葉にしていくことが大切

金澤さんの透析は週3回、午後5時~9時半まで4時間半かけて行っています。大学院では授業のほか、校外実習や心理面接実習もあり忙しい毎日です。「記憶力の低下を感じています。あと若い人とのギャップはありますね。若い頃、『このオヤジ、何言っているんだ』と思ったオヤジ的な態度を自分がとっていることに気づいたりして」と笑う金澤さんの様子から充実した生活のようすがうかがえます。

さらには修士論文も進行中で、テーマは「アレキシサイミア(失感情症)」。アレキシサイミアとは、自分の感情や葛藤状態に気づきにくく、またうまく言葉にできない状態で、心身症への関与が指摘されています。「透析患者にはアレキシサイミアが多いといわれています。透析を受けたことによってアレキシサイミアになったのか、アレキシサイミアという人格特性が心身への気づきを遅らせ、その結果透析に至ったのかに興味を持ちました。この点をはっきりさせたかったのです」。

「実は僕もアレキシサイミア体質なんですよ」と金澤さん。自分の気持ちをうまく言葉にできず、それが高血圧、消化器の不調など体に出ていたといいます。「前はストレスがあってもストレスを感じられませんでした。心理の勉強を始めてから、ストレスをストレスと感じられるようになり、言葉にできるようになりました」「自分の気持ちを言葉にすることはとても大切。言葉にして、それを受け入れてもらえる体験で人は安心できるのです」。金澤さんは患者会に入り、患者さん同士話合うことを勧めます。

「透析は病気ではないと思っていた時期もありました。でも、今は透析は生と死の極限状態にあるんだと思っています。だから『頑張ろう』なんて無理することはないんです。前向きにいろんなことに取り組まれている方はもちろんすばらしいですけど、すばらしくなくてもいいじゃないですか? なんとなく生きていけば、そのうち上向くこともきっとありますから」。そう語る金澤さんは、すでにセラピストのようでした。

アレキシサイミア
心身症の病状を説明する概念の一つ。特徴は(1)創造力や空想力に乏しいこと(2)自分の感情や葛藤状態に対する言語化ができず、情動の体験と表現が制限されること(3)事実をくどくどと述べるが、それに感情表現が伴わないこと(4)対人関係は一般に貧困で、機械的な対応が多く、面接者とのコミュニケーションが困難なことなどがあげられる。
参考
財団法人日本臨床心理士資格認定協会 ホームページ
心理学辞典(有斐閣)

 

 

 

 

 

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