「CKD診療ガイドが改訂されました」
1年に1度、日本中の腎臓専門医が集まる日本腎臓学会学術集会が、6月1日~3日にパシフィコ横浜会議センターで催されました。今回の目玉は、「CKD診療ガイド2012年版」の発行です。
CKD(慢性腎臓病)の診療には、かかりつけ医と腎臓専門医の連携がとても重要と言われていますが、「CKD診療ガイド」は、その連携の指針が示されたもので、多くの医療従事者に利用されています。
今年、世界的な腎臓病学団体であるKDIGO(国際腎臓病予後改善委員会)が中心となって、10年ぶりにCKD診療を再評価し、重症度分類を改訂しました。日本でもこの改訂に合わせて、従来使用されていた「CKD診療ガイド2009」が改訂されました。
編集部が独自にまとめた新しい「CKD診療ガイド2012」の変更ポイントは以下の通り。
1. | 診断基準は従来どおり | |
---|---|---|
2. | 重症度の分類を変更 | |
(ア) | 原疾患、尿たんぱく、GFRの3項目で評価する(従来はGFRのみ) | |
(イ) | 日本の診療実情にあわせてアルブミン尿と尿たんぱくの区分を設定(新項目) | |
(ウ) | CKDステージ3を実情にあわせて2つに分割(新項目) | |
(エ) | 重症度の表記は従来のステージ1~5だけではなく、G4A2のようにより詳細に記述する(新項目)※ | |
3. | 血圧管理法の変更 | |
(ア) | これまでの基準(尿たんぱく1g/日以上で125/75mmHg未満)は撤廃。全て130/80mmHg以下に統一(改定)。 | |
(イ) | これまであらゆる条件下で第一選択薬としていた降圧剤(ACE阻害薬、ARB)を、尿たんぱくがない、非糖尿病患者で第一選択薬はなく、患者の状態に合わせて治療するように変更(改定) |
※下記事の表を参照。
腎臓病学は常に進歩しています。今回の改訂は世界中でCKD研究が深められ、それを蓄積した成果を日本の実情に即して取り入れるべく、専門医たちが取り組んだ成果です。
【ご参考:CKDのステージ分類】
CKD (慢性腎臓病)のステージ(病期)分類と、治療の目安はこちらをご覧ください。
ご自分がどのステージか?の簡単なチェックもできます。
改定の最大のポイントは重症度判定の変更です。具体的には以下の表に表現されています(出典:日本腎臓学会編;CKD診療ガイド2012:東京医学社,東京.2012)。
上述の通り、前回のガイドラインで明記された重症度の判定に必要な評価項目はGFR1つのみでしたが、今度の改定で、重症度は、原因(Cause:C)、腎機能(GFR:G)、蛋白尿(アルブミン尿:A)の“CGA”、3つの評価項目に基づいて判定されることとなりました。
改定前の重症度診断は、GFRのみで判定されていましたので、イメージとしては、ちょうどこの表の下半分だけで評価されていたということになります。今回の改訂で、これに上半分の原疾患や尿たんぱく区分をあわせて評価され、色付きのマス目部分でその患者さんの重症度・リスクがわかる仕組みです。
例えば、GFR46で糖尿病をもち、微妙アルブミン尿160の患者さんはG3aA2でちょうどオレンジ色のマス目のリスクを負っていることになります。
プロセスは複雑化しましたが、正確性や診断の妥当性は増すと推測されています。
なお、実際のガイドラインには、この重症度判定にもとづく、専門医への紹介基準などが明記されており、一般医の治療指針として大変わかりやすいものになっています。
