腎臓教室 Vol.10 – 腎臓サポート協会WEB

腎臓教室 Vol.10

特集「腎臓病と運動(その2)」

透析をしている患者さんには、よく「適度な運動を心がけてください」という指導がなされますが、保存期の患者さんには安静第一と言われています。保存期でも適度な運動は必要なのか、どの程度の運動なら可能なのか、考えてみましょう。
監修:舞平クリニック 院長 平沢由平 先生

なぜ、激しい運動がよくないのか

慢性腎不全などで通院していると、かかりつけの医師などから、日常生活における食事や運動、働き方などについて指導を受けます。運動については、激しい運動を避けるように注意されることでしょう。

なぜ激しい運動が腎臓によくないのか。簡単にいうと、身体の筋肉を使うことにより、クレアチニンや尿素などの老廃物が溜ります。腎臓の仕事の1つに体の中の老廃物を取り除くことがありますが、老廃物が溜れば溜るほど腎臓の仕事は増えることになります。

また運動すると汗をかき、体内の水分が急激に失われます。これも体内の水分の調節役である腎臓の仕事を増やすことになります。その他、腎臓は原尿を作るために1日にドラム缶約8本分(約1.5トン)の血液を必要としますが、筋肉を使うと血液が筋肉のほうへ多く流れ、腎臓への流量が減ってしまうのです。

なぜ、適度な運動が必要なのか

だからといって、なるべく筋肉を動かさないように寝てばかりいては、筋肉がやせて、体力が低下してしまいます。透析期になると逆に運動が奨励される場合もありますし、保存期においても体力は必要です。

医師などからきびしく安静を指導された方は別として、体力が低下しないように適度な運動を心がけるようにします。適度な運動とはどういったものかについては、個人の症状により異なりますので、医師などの指示に従いましょう。

チームプレーはできるだけ避ける

あくまで一つの目安として、適度な運動の例を表1~表3にまとめましたので参考にしてください。ただし、ここで注意してほしいのは、チームでプレイをする運動についてです。

表3の中でもいくつか入っていますが、チームプレイは自分のペースで行うことができず、ついつい無理をしてしまいがちです。できれば自分のペースを守ることができ、こまめに休憩のとれる運動が望ましいといえるでしょう。

たとえば、表2/D(軽度制限)の方なら軽いジョギングや早足散歩など、C(中等度制限)の方ならサイクリングや早足散歩など、B(高度制限)の方なら散歩やストレッチ・ラジオ体操などがあります。こういった運動を20分~30分ぐらい。いずれにしても、こまめに休憩をとることを忘れないようにしてください。

もし、表2/CまたはDの方で、「どうしてもゴルフがしたい」など、自分ひとりでなく仲間と行う時でも、自分のペースでこまめに休憩がとれない場合(例:試合、接待ゴルフなど)は、避けておいたほうがよいでしょう。

夏だから、とくに注意!

夏はただでさえ汗をかきやすい季節です。中でも入浴は汗だくになりがちですが、これも激しい運動と同じことになりますので十分注意が必要です。またスイカのおいしい季節でもありますが、スイカなどの果物や生野菜類はカリウムが溜るので、カリウム制限を指示されている方は食べすぎにご注意を。

オフィスなどは冷房のききすぎが指摘されていますが、冷房で身体を冷やすことは腎臓によくありません。上着を持参するなど、なるべく背中を暖めるようにします。その他、寝冷えや寝汗もよくないのでこまめに室温を管理しましょう。

◆表1 腎疾患患者の生活指導

蛋白尿 1g/day未満 蛋白尿 1g/day以上
高血圧(-) 高血圧(+) 高血圧(-) 高血圧(+)
腎機能正常
腎機能軽度低下
腎機能中等度低下
腎機能高度低下
腎不全期
尿毒症期

※A、B、C、D、Eの各生活指導区分の「家庭・余暇活動に関する」内容は表2に説明してあります。(参考「腎疾患の生活指導・食事療法ガイドライン」日本腎臓学会編 1998年)

◆表2 成人の生活指導区分表

指導区分 家庭・余暇活動
A:安静(入院・自宅) 不可
B:高度制限 散歩、ラジオ体操程度(3~4メッツ以下)
C:中等度制限 早足散歩、自転車(4~5メッツ以下)
D:軽度制限 軽いジョギング、卓球、テニス(5~6メッツ以下)
E:普通生活 水泳、登山、スキー、エアロビクス

参考「腎疾患の生活指導・食事療法ガイドライン」日本腎臓学会編 1998年)

◆表3 メッツ表

1メッツ 安静
2メッツ 入浴、洗濯、調理、ぶらぶら歩き、ボウリング、ヨガ、ストレッチ
3メッツ 掃除、普通歩き、ゲートボール、グラウンドゴルフ
4メッツ 庭仕事、少し早く歩く、日本舞踊、ラジオ体操、水泳(ゆっくり)、水中ウォーキング
5メッツ 農作業、早歩き、卓球、ダンス、ゴルフ、スケート
6メッツ ジョギング、水泳、バレーボール
7メッツ以上
のもの(一例)
登山、サッカー、バスケットボール、ランニング、エアロビクス(激しい)

※メッツ:安静時酸素消費量を1メッツとして、その何倍の酸素を消費するかにより運動強度を示す指標。(参考「腎疾患の生活指導・食事療法ガイドライン」日本腎臓学会編 1998年)

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