腎臓教室 Vol.23
腎臓病の種類と透析
腎臓病にはどのような種類があるのか、また、腎臓に負担をかけないためにはどのような点に気をつければ良いのか、中でも食生活における注意点は……などの問い合わせが当協会にもしばしば寄せられます。そこで今回は、当協会顧問で透析医療を専門とされる大平整爾先生に腎臓病の種類や食生活上の留意点について解説していただきました。
大平 整爾(おおひら・せいじ)先生
札幌北クリニック院長
北海道大学医学部第一外科、日鋼記念病院院長を経て、現在は 札幌北クリニック院長、日本透析医学会理事長。当腎臓サポート協会顧問。透析医療、腎不全外科、医療の倫理を専門とする著書多数。
食塩の摂り過ぎは腎臓に負担
病気の発生には、生活習慣・環境因子・遺伝的素因の三つの要素が関係しています。生活習慣には、食生活・運動・喫煙・飲酒・ストレスなどが挙げられるでしょうし、環境因子には気候(寒暖・湿度)や空気汚染などがあります。両親から受け継いだ遺伝的な素因もむろん、病気の発生に深く関連しますが、これを変えることは現時点ではまず不可能です。腎臓病に関していえば、食生活とくに食塩の摂取量が大切な意味を持っております。味噌・醤油・漬物などが欠かせない日本食は、概して食塩摂取量が多いようです。昭和10年の調査で北国では1日34gの食塩を摂っていたと報告されていますが、平成15年には全国平均で12.3g/日と目立って減少してきています。同じ年、アメリカの食塩摂取量は10.2g/日でした。
厚労省は1日食塩摂取量を10.0gであることを勧めていますが、塩分の最低必要量は本来わずかに1.5g/日であることを知っておきましょう。食塩の摂り過ぎは腎臓に負担をかけ、血圧上昇の原因となりますので注意が必要です。
糖尿病、恐るべし!
さて、腎臓は、- 体液を質的量的に一定に保つこと
- 造血促進因子(エリスロポエチン)の生成
- 血圧に関係するホルモン(レニン)の生成
- ビタミンDの活性化などの働き
表1 年別透析導入の原因となる患者の推移
1984年 | 1994年 | 2004年 | |
糖尿病性腎病 | 17.4% | 30.7% | 41.2% |
慢性糸球体腎炎 | 58.7% | 40.5% | 28.1% |
腎硬化症 | 3.3% | 6.1% | 8.8% |
多発性嚢胞腎 | 2.8% | 2.5% | 2.7% |
慢性腎盂腎炎 | 2.2% | 1.4% | 0.9% |
急速進行性腎炎 | 0.7% | 0.8% | 1.1% |
SLE腎炎 | 1.1% | 1.2% | 0.8% |
(日本透析医学会統計調査委員会:2004年12月末)
適正な体重維持を心がける
食生活は「己の欲するところに従って、則を越えず」が理想的なのですが、なかなかこのようには進まず、やはり意識的に自らの規則的な食生活を目指さなければなりません(表2)。糖尿病に伴って肥満になることがあります。適正な体重の算定にはBMI(Body Mass Index)という計算式がよく使用されます。体重(kg)を身長(m)で二度割ることで、簡単に計算できます。体重が80.0kgで身長が1.74mであれば、80÷1.74÷1.74=26.4(BMI)となります。標準が「22」ですから、このような場合は肥満と判定されます。ご自分のBMIを時々計算することをお薦めいたします。腎臓病には多くの種類がありますが、私ども日本人が現時点で最も注意を払わなければならないのが糖尿病であることを心に留めておきましょう。表2 腎臓病と食生活の心がけ
- 規則的な食生活
夜食・間食を控える、飲酒はほどほどに - バランスのよい食事内容
多様な食材の組み合わせ(1日30品目の摂取) - 食塩は1日10グラム未満に
- 脂肪の摂り過ぎに注意
- 栄養成分表示を見て、食品や外食を選ぶ習慣を
外食は、概して高塩分・高蛋白食である - 自分の適正体重を絶えず知っておくこと
BMI = 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
標準値=22 痩せ=18.5未満 肥満>25