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腎臓サポート協会とは

「じんぞう教室」バックナンバー 30号

じんぞう教室

  • CAPD(腹膜透析)とQOL(生活の質) 

去る10月13日から15日まで、大磯プリンスホテルにおいて、国際腹膜透析シンポジウムが開かれました。海外からの参加者も含め、多くの医師、看護師、技士などが一同に会し、日ごろの研究成果を発表したり、最新の情報を交換したりしました。どのワークセッションも中身の濃い内容でしたが、今回は、大会2日目に行われたCAPDとQOLについての発表から、一部を紹介いたします。

  • CAPDと血液透析のQOLの比較

田川市立病院の中本雅彦先生と、福岡赤十字病院腎センターの八尋恵子先生の司会のもと、4人の演者がそれぞれの立場から発表されました。

QOL(生活の質)という言葉が言われ始めて20年あまりになりますが、最近ではいちいち生活の質と言い直さなくとも理解されるようになってきています。1984年にWHOが宣言したように、QOLはあくまで個人の主観がベースであり、満足度には個人差が大きいことから、数値化して測るのはかなり難しいものがあります。しかしながら、東京共済病院腎臓内科の田村博之先生は、主観的要素の強いQOLであっても、5段階法で評価をすると、かなり客観的なデータを得られることを示されました。

臨床症状、メンタル面、サービス満足度などの観点から、血液透析とCAPDとのQOLの比較を行ったところ、CAPD群のほうがやや高いという結果がでたものの、項目によってはさほどの差はなかったということでした。司会の中本先生も、CAPDと血液透析との比較の論文を見ても、死亡率、入院の長さなどにはあまり差はなく、継続率に関しては、CAPDのほうが低いという論文のほうが多かったと発表されました。

福岡県立大学看護学部の三村洋美先生は、CAPD患者を対象として、QOLを高める看護の介入の必要性を指摘され、そのための指標づくりを提案されました。介護の質、量を数値化して、個々の腹膜透析患者のQOLを高めたいと、熱っぽく話されました。

同時に、北九州方式と呼ばれる「PDラスト」の考え方も紹介されました。終末期の患者に、どうしても最後は自分の家で迎えたいという強い希望がある場合、血液透析からCAPDに移行して自宅に戻り、透析を続けながら大好きな果物を食べ、塩辛い味噌汁に塩辛を食べて幸せな気分で家族に見守られて生を終えるということが、CAPDなら可能であるという考え方です。ただし、その場合は医療職のサポートが必要であることも指摘されました。

  • CAPD患者のQOLを高めるための各病院の取組

千葉の亀田総合病院では、導入時から、週1日、まったくCAPDをしない日を設け、CAPD休息日としている、と腎センターの望月隆弘先生が話してくださいました。そのためにCAPD導入が早まることはないかとの質問には、全日CAPDをする場合とで導入時期に差はないとのことでした。またCAPD患者は、病院で枕を並べて血液透析を受けるのとは異なり、どうしてもコミュニケーション不足に陥りがちなため、旅行会を積極的に行っているとのことでした。医師、看護師、栄養士、メーカーの人がボランティアで同行しているといいます。旅行会の実施は、患者同士の親睦が深まるばかりでなく、介護者には休息日となり、CAPDへの理解が深まるなど、メリットが多いようです。千葉県中部という土地柄、初めは1泊のバス旅行だったのが、今はアクアラインができて羽田が近くなったこともあり、飛行機で行く2泊3日の旅行が主流とか。また病院での旅行会がきっかけとなって夫婦で出掛けるようになった人もいるということです。

岡山済生会病院では、高齢者に積極的にCAPDを導入していますが、80歳以上の患者では、日常生活では自立していても、CAPD管理については不安が強いので、導入の時から訪問看護を併用することで患者の不安の解消を図っているそうです。でも、導入時に週何回も訪問看護が必要であった人も、慣れてくると週1回の訪問看護だけで、あとは自分でCAPDを実施している高齢者も多いと、腎臓病センターの三上裕子師長が話してくださいました。

しかし、自立度の低下に伴って家族の負担が増えることで、患者自身のQOL低下以上に、介護する家族のQOLが低下してしまうという問題が発生することもあります。この点を改善するためには、現在は認められていない介護保険を使ったヘルパーによる治療介助を(家族は認められているのに)、将来的には、訓練を受けたヘルパーであれば介助を認めるべきではないでしょうか。またCAPD患者に限らず、透析患者はショートステイができないとか、施設入所が断られるというケースも多々あり、これらも、将来的に改善されることが望まれます。

おわりに――CAPDが体にやさしく、腎臓の残存機能をより長くもたせ、自宅でできる治療法でありながら、日本ではなぜか、全透析患者の4%にしか普及していません。またCAPDを始めても、毎年10%の人は血液透析へ移行していると言われています。今回の発表の中に、その理由の一部が垣間見られたように思います。

血液透析が、病院へ通う不便さはあっても透析をしない日があるのに対して、CAPDは毎日続けなければいけない煩雑さがあることも一因かもしれません。また、在宅治療というメリットは、同時に介護が必要となった場合には負担となることもあります。こうした問題を解決する医療者側の様々な取組、訪問看護などの制度の活用、さらには将来的な制度の改善が、CAPDがさらにQOLの高い治療法になるための課題と考えられます。

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