腎臓教室 Vol.36
食事療法を成功させるためのポイント(その2)
残っている腎機能を大事にするために、食事療法はとても大切な治療の一つです。前号に引き続き、食事療法を成功させるためのポイントを大野記念病院栄養科・管理栄養士の田村智子先生に紹介していただきました。
医療法人寿楽会 大野記念病院 栄養科
管理栄養士 田村 智子(たむら・さとこ)先生
治療用特殊食品の利用
低たんぱく食の食事指導をさせていただきますと、患者さんやご家族の方から「献立が立てられない」「何をどのように食べていいのか、わからない」などといわれます。栄養士からは、「魚類や肉類を減らしてください。でも、良質のたんぱく質は欠かさないようにしましょう。エネルギーはしっかり摂りましょう」といわれるのですから、そう思われるのも仕方ないことですね。
低たんぱくで高エネルギーにする食事療法を、通常の食品だけで行うことは困難です。そのために腎疾患治療用の特殊食品を利用することが必要となってきます。これらの食品は低たんぱく質、高エネルギー、減塩になっており、米飯、めん類、パン類、調味料、菓子類、副食のおかず類の形態になっています。
たとえば、主食を低たんぱくごはんに変えると、ごはんから摂取するたんぱく質を魚や肉などの副食の良質たんぱく質に置き換えることができます。
エネルギー源は炭水化物や脂質から補給しますが、摂取量には限界があります。特殊食品の粉飴はエネルギーが砂糖と同じで、甘みは低いので、飲み物や菓子類に入れると抵抗なくエネルギーを増やすことができます。
特殊食品の油MCTは消化吸収がよく、脂肪になりにくく、脂っぽさがないので、ごはんを炊く時に入れたり、卵焼きやマヨネーズに混ぜたりできます。減塩の調味料もさまざまあり、カリウム、リンの含有量も少なくなっています。
これらの食品を上手に利用することで、献立が豊かになります。購入方法は病院の管理栄養士にお聞きになってください。インターネットで検索することもできます。
気軽に食事相談を!
最近ではインターネットで献立作成、栄養価計算ができる仕組みがあります。しかし、個々の患者さんの日常食生活に合わせての献立作成には応じきれないのではないかと思います。栄養量が指示通りになっていても良質のたんぱく質が摂取できていなかったり、エネルギーの摂取の仕方が脂質に偏っていたり、野菜類が不足していたりすることがあります。腎疾患治療用の特殊食品が正しく使用されていないこともあります。
栄養士はそうしたことを修正する具体的なアドバイスをしながら、食事療法での不満、悩み、困っていることの相談に応じます。
「こんな食事内容では栄養士さんに怒られる」なんて思わずに、気軽に食事相談室のドアをノックしてください。逆に栄養士は患者さんの献立を参考にさせていただきたいと思っています。一人で悩まずに、栄養士とともに食事療法に取り組んでいきましょう。