トップ > 腎臓サポート協会とは >「じんぞう教室」バックナンバー 51号

 

腎臓サポート協会とは

「じんぞう教室」バックナンバー 51号

じんぞう教室

  • 家庭透析は素晴らしい

埼玉医科大学 腎臓内科 鈴木洋通先生

家庭透析とは、自宅で行う血液透析のことです。対応できる医療機関が少ないこと、自宅に設備が必要なこと、また自分で操作をしなければならないことなどから、日本では家庭透析を行っている患者さんは、全国でまだ190名余り(日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況」2008年末現在より)にとどまっています。今回は、この「家庭透析」についてご紹介いたします。

  • 中年には家庭透析を

 私は以前から現在の「施設透析」という現実に、疑問を抱いてきました。“我慢が第一”の医療で本当によいのだろうか。テレビをつけても新聞や雑誌の広告を見ても、グルメや食べ放題の文字が踊っています。そのなかでより自由かつ患者さんの体にあった透析治療を目指すにはどうすればよいのかと考えて、いくつかの試みを始めました。
 ひとつは、“高齢の方には腹膜透析を、若い人には移植を、さらに中年の人には家庭透析を”という取り組みです。今回はそのなかの「家庭透析」についてお話をさせていただきます。ここ5年ほど家庭透析に力を入れ、現在では私の施設で家庭透析が50名を超えるようになりました。

  • 家庭透析でどこまで改善するのか

 家庭透析がどんなに素晴らしいか、まずは私が「3大奇跡」と呼んでいる患者さんたちを紹介したいと思います。1人目、糖尿病性腎症で失明寸前だった人が視力を取り戻しました。これには大変驚きました。眼科医もびっくりです。家庭透析を始める前は何回も眼底出血を繰り返していましたが、家庭透析を始めて1年くらいしたところで目が見えるようになってきたのです。
 2人目は膠原病で下肢を手術しており、杖を頼りに歩いていました。その人がなんと杖なしで歩けるようになりました。3人目、脳卒中で話すことができなかった人が、話せるようになりました。ここで紹介した3人以外にも、多くの人が通常の透析治療とは異次元の経験をしているといっても過言ではありません。なぜでしょうか。

  • 家庭透析が腎臓に近い働きをしてくれる

 現在家庭透析をやっている人は、血清クレアチニンの平均値が2~4mg/dl前後、尿素窒素が10~20mg/dl前後です。カルシウムやリンをよほどとり過ぎている人を除けば、ほぼ正常です。貧血に関しては、エリスロポエチン製剤を1ヵ月に1回程度使っている人が半数くらいです。また降圧薬も使用している人は半数以下です。
 これは多くの人が少なくとも1週間に5ないし6日間、1回3ないし4時間の血液透析を行っていることで、これらの結果が生まれていると思います。多くの患者さんが、「日常生活では普通の人とほとんと変わりがない」といっており、それは透析がしっかりと腎臓の役割を十分にはたしているからではないかと思っています。糖尿病の人では血圧の下がり過ぎがなくなってきます。
 高齢の方も家庭透析に挑戦しており、70歳を過ぎた方も時間をかけて家庭透析を習得されています。透析機械に回路を組み立てること、自分での穿刺(せんし)ができるまでには数ヵ月がかかりますが、その後は食べたかったみかんもカツ丼も食べられるようになり、水の制限もかなり少なくなります。
 もちろんまったく普通の人と同じ生活でよいわけではなく、それなりの自覚も大切ですが、“我慢を重ねての自覚”と“ゆとりをもった自覚”とでは、人生(腎生=腎と生きる)が大きく遣ってきます。

  • 自分のライフスタイルに近い生活が可能に

 日本では昔から我慢することが尊ばれてきました。その意味で透析、とくに血液透析治療は日本人に適していたのかもしれません。透析になれば水分や塩分、蛋白質の制限をはじめ、カリウムの多い果物も控えなければならず、好きなものを好きなだけ食べることをガマンしなければなりません。そのうえ週に2~3回はどんなに天候が悪くても、病院に通わなければなりません。
 また多くの先生から透析に入る前に、「食事療法をきちんとしないと透析になってしまいますよ」といわれた経験をもつ人も多いのではないでしょうか。もちろん生活習慣病、とくに糖尿病がもとで透析治療を余儀なくされている人はたくさんおり、自分の身の不始末といわれてしまえばそれまでかもしれません。
 しかしすべての人がそうではなく、生活習慣を簡単に変えることができれば誰も苦労などしないと思います。家庭透析はそれまでの自分のライフスタイルに近い生活が可能になる透析治療だと思います。

  • スタッフや家族が支え

 家庭透析はよいことづくめのように書きましたが、それを支えるスタッフのこれまでの努力があってこそ、患者さんにそのような素晴らしい医療を提供することができ、さらには患者さんやその家族の方々の献身があってこそといえます。ぜひ多くの地域で今後家庭透析を行い、透析になったらおしまいではなく、また新たな挑戦が始まるといった気概のもてる腎代替療法を多くの患者さんに提供していきたいと考えています。

<< バックナンバー 一覧へ戻る

 

 

このページのトップへ