体験談 / 一病息災 Vol.117 – 腎臓サポート協会WEB

体験談 / 一病息災 Vol.117

腎臓病と共にイキイキと暮らす方々に、腎臓サポート協会理事長 雁瀬美佐がインタビュー
(職業や治療法は、取材当時のものです *敬称略)
  • PD

瀬沼 範光 さん(せぬま のりみつ)

患者さんの体験談~一病息災~ vol.117

腹膜透析でいつまでも動いていたい90歳

寝ている間に透析をしてくれる便利な「腹膜透析」で、昼間は家の掃除をしたりバイクで買い物に出かけ充実した日々を過ごす瀬沼さん。全部自分でおこなう腹膜透析は大変だけれども、だからこそ毎日の規則正しい生活がある、「動いていなければ人間はだめになる」と自分を叱咤激励し、疲れたら昼寝もありの悠々自適の90歳。
聞き手:雁瀬 美佐(腎臓サポート協会)

瀬沼さんの病歴・治療歴
1931年生まれ
77歳(2008年):かかりつけ医院の健康診断で腎臓病の疑いありと診断、
東海大学医学部付属八王子病院で慢性腎炎と診断される
84歳(2015年):腹膜透析開始(クレアチニン4.2、
尿素窒素100超、貧血あり)
90歳(2021年):腹膜透析継続中(クレアチニン4.0、尿素窒素40、
排尿維持)

体力には自信があったのに腎臓病と言われてがっかり

雁瀬 バイクで受診されているそうですね。元気な方でも大変なのに、とても透析治療をしているようには見えませんよ。バイクはいつから乗っていらっしゃるのですか?
瀬沼

瀬沼さん

元々郵便局員で、配達や簡易保険を担当していました。自転車で起伏の多い八王子を走り回っていましたが、バイクが使えるようになってからはものすごく楽になりました。バイクでの集金を73歳まで続けましたが、今でも近くの買い物や診察には乗っているので50年乗り続けています。
雁瀬 日に焼けて体もしっかりしていますね。そんな瀬沼さんが最初に腎臓が悪いとわかった時期ときっかけは?
瀬沼 77歳くらいの時です。近くのかかりつけの医院で定期的に受けていた健康診断の血液検査で腎臓の数値が悪いことがわかり、「大きな病院で専門の治療を受けた方がよい」と言われて東海大学医学部付属八王子病院を紹介されました。自分では痛みも症状も何も感じていなかったので「慢性腎炎」と言われ、正直あまりよい感じはしませんでしたね。「これは治らない病気なんだな」とがっかりしたことを覚えています。
 それから7、8年間は定期的に受診しながら食事療法などを続けていました。元々うちは薄口の方で塩分は少なめの料理だったので食事療法と言ってもあまり気になることもなく、食べたいものは食べていましたね。
 朝は1時間ほど近くの公園を歩いたりしていたけど、10年ほどして、腰部脊柱管の病気で腰痛になって、なかなか動けなくなりました。でも今でも家の掃除は私がしています。家事も結構重労働ですが、「体を動かさないと人間はだめになる」と思い、家のことも毎日一生懸命やっています。

保存期7年を経て84歳で透析に

雁瀬 そろそろ透析をと言われた頃のことは覚えていらっしゃいますか?
瀬沼 特に何かつらくなったとかの自覚症状はまったくありませんでした。実は、私の兄も腎臓が悪くて、病院で血液透析をしていたので、先生から「そろそろ透析をやらなきゃだめですね」と言われて、まず思い浮かんだのが兄のことです。兄の腕のシャントを見ていて、自分は絶対に嫌だと思って先生に相談したところ「じゃ、腹膜透析という方法もありますよ」と言われて、いろいろ聞いて、2015年5月から腹膜透析を導入しました。
雁瀬 腹膜透析をする日々、どのように過ごされていますか?
瀬沼 朝は4時に起きて洗顔が終わったら、夜通しおこなっていた腹膜透析の管や排液が入ったタンクを水で洗います。7時頃に朝食が終わると夜の透析の準備をしておきます。袋に透析液が2種類入っていますから、その境目を両手で破って2種類の液を混ぜることから始めます。透析は夕食後8時から翌朝の4時半、つまり寝ている間に機械が自動的にやってくれます。透析に関することはすべて自分でやっています。女房が健康なお陰で、食事作りは任せていますし、自分の透析のことは自分で専念できます。年をとると食事量は減りますが、1日3食はきちんと摂るようにしています。間食はまったくしません。
雁瀬 腹膜透析をすべて自分でやることに負担や不安はありませんでしたか?
瀬沼

瀬沼さん

いや、不安とか心配はなかったけれども、いざやってみたら色々な仕事があるわけで、結構大変だというのが印象です。準備から始まって機器の後始末、透析液の残量などの報告が日課で、毎日その繰り返しです。
 1日も休まず毎日やらなければならないということで、自分がこれをやる体力が必要だということです。でも、むしろこの日課があるからこそ、10年も20年も風邪を引いて寝込んだことはありません。寝てなんかいられませんよ!それがよいリズムになっているのかもしれませんね。昼間は、週に3日は家や庭の掃除をしたり、バイクで近所に買い物に出たりしています。私はじっとしているのが嫌なんですよ。
 朝起きた時に倦怠感を感じる時はありますが、兄がやっている血液透析と比べると、病院に行くのは月に1回の受診でよいし、コロナが蔓延していても毎日家にいられるし、よかったなと思うんですよ。昼寝だってしようと思えばいつでもできるし、掃除をしてきれいに気持ちよく暮らせるしね。もう90歳で体力が持たないですから、自分の体と相談しながら「ああ、疲れたな」と思ったら少し横になるとか、自由がききますね。
雁瀬 腹膜透析をやっていて失敗したことはありますか?
瀬沼 機械相手なのでわからないことはありますね。そんな時は腹膜透析のメーカーに電話をすると解決法をすぐに教えてくれます。夜中に電話をしても必ず出てくれるので本当に助かります。言われた通りにすると、きちんとできるのでとても安心できますね。いまだにいつ何があるかわからないから、夜寝ていても多少の不安はありますが、腹膜透析をやっているから、こうやって生きていられるんだという利点もあるので。
 1回だけ、管の挿入口から菌が入って、病院に2週間くらい入院したことがありました。でもそれだけで、他のトラブルは一切ありません。
雁瀬 毎日続ける秘訣や慢性腎臓病の方にお伝えしたいことはありますか?
瀬沼

瀬沼さん

腹膜透析は寝ている間にやってくれるので、週に何回も通院する必要もありませんし、メリットはたくさんあります。1箱10㎏くらいの透析液を定期的に届けてくれるのですが、寝室のある2階まで持って上がってくれます。それが月に20個~30個もあるので、これは大変な仕事ですよね。本当にありがたいです。
 腹膜透析のメリットを感じて、これで行けるところまで行きたいと今は思っています。腹膜透析の医学的なことや技術的なところはお医者さんと機械がしてくれるわけですから、患者はそれを正しく自分自身でやらなければならないということです。つまり自分が主体にならなければいけないので、その自覚が大切だと思います。いや、結局それをやらなければ自分は生きていけないわけだからね。「自分のためにやるんだぞ」と言い聞かせていますよ。「がんばらなければ」とね。
 今は毎日の生活を穏やかにできれば、それでよいと思っています。

インタビューを終えて

バイクで通院している90歳の患者さんがいるとお聞きして、お会いしたくなりました。最初はとても緊張されていて、「僕の話なんて聞いてもらうほどのものはないよ」とうつむき加減に謙遜されていましたが、昔のお仕事のお話、今のお掃除や買い物の充実した生活のお話になると、目や声が生き生きとされてきました。真っ黒に日焼けした手の甲にも納得。主治医の先生と相談し、自分で選んだ治療を信じて邁進する姿に迷いは感じられません。私まで勇気をいただきました。ありがとうございます。運転に気を付けて、これからもまだまだ長生きしてくださいね。

 

雁瀬美佐

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