腎臓移植

腎臓移植について

腎臓移植について

腎臓移植は、末期腎不全で腎臓が機能しなくなった方に他の方の腎臓を移植し、その人の腎臓として働くようにさせる医療です。腎臓移植は慢性腎不全の唯一の根治的治療であり、これが成功すれば免疫抑制剤を飲む以外は普通の人と同じように生活することができます。
2021年12月末現在、日本には透析患者さんが349,700人いる一方、腎臓移植を受けている方は、2021年では1,773人で、日本ではまだまだ標準化された治療とは言いにくいですが、アメリカでは2021年24,670件で、移植の実績があり、海外では珍しい治療ではありません。

二つの腎臓移植

腎臓移植には肉親や配偶者から腎臓を提供してもらう生体腎移植と、亡くなった方から腎臓をいただく献腎移植があります。
生体腎移植は親、子、兄弟などの血縁者、または配偶者などのドナー(腎臓を提供する人)から腎臓を1個取り出してレシピエント(移植を受ける人)に移植します。家族による腎臓提供は、あくまでも自発的な善意に基づくものであり、強制や圧力はタブーです。健康な人の体から腎臓を取り出すという特殊な医療ですから、よく考えて慎重に決断する必要があります。また腎臓を提供したドナーは腎臓がひとつになるため、レシピエントとともに経過観察も重要です。最近では透析を経ない未透析移植や血液型のちがう不適合移植も多く行われるようになり、成績も良好です。
一方、献腎移植を受けるには、事前に日本臓器移植ネットワークに移植希望の登録をしておく必要があります。わが国では、献腎移植 希望者に比べて死後の提供数が少ないことから、平均待機期間は約15年です。(2023年4月の献腎移植 の登録者13,757人、2022年に実際に移植を受けた方215名(膵腎同時、肝腎同時移植も含む))。

(公社)日本臓器移植ネットワークホームページより

移植された腎臓が拒絶反応を起こさずに十分機能するためには、ドナーとレシピエントの適合性がよいことが重要になります。腎臓移植の場合には、HLAと呼ばれる白血球の型があっているほど、移植の成績がよいとされています。臓器の提供があった場合、登録者の中から、レシピエント候補者がドナーに対する抗体がないこと(リンパ球交差試験陰性)、血液型一致などの条件を満たした上で、20歳未満の方が優先され、提供施設と移植施設の所在地やHLAの型の適合度と、日本臓器移植ネットワークに登録してからの長さなどをポイント化し、ポイントの高い人が選ばれます。
移植された腎臓が機能する率を生着率(せいちゃくりつ)といいますが、移植後5年の生着率は生体腎移植で約93.1%、献腎移植 で約87.8%となっています。*腎移植臨床登録集計報告(2022)移植57:199-219、2018より(2010年~2020年の5年生着率)

ドナーとレシピエントの条件について

  • レシピエントに移植手術に耐えられる体力があること。
  • 生体腎移植の場合、ドナーが健康で、腎臓機能に問題がないこと。
  • ドナーとレシピエントに悪性腫瘍、感染症などの病気がないこと。
  • 生体腎移植の場合、ドナー、レシピエントの年齢についての制限はありませんが、高齢になるほど条件は悪くなるので、一般には70歳ぐらいまでが目安とされます。
  • ドナーとレシピエントの血液型は、従来は適合していることが条件でしたが、移植医療の進歩で、不適合の場合でも生体腎移植が可能になっています。

HLA型も、献腎移植では適合度の高い組み合わせが選ばれますが、生体腎移植の場合は適合しなくても移植の成績は良くなっています。

腎臓移植の手順(生体腎移植の場合)

1. 腎臓移植の実施病院へ

1. 腎臓移植の実施病院へ

現在治療を受けている病院の紹介状を持って、ドナー候補の方と一緒に腎臓移植を実施する病院を受診します。

2. 意思確認

医師や移植コーディネーターから移植について十分な説明を受けますが、移植についての意思は精神科医などの第三者が確認します。特にドナーの腎提供は自分自身の意思によるものか、強制によるものかを確認してもらいます。

3. 検査

移植に対する意思が確認された上で、ドナーとレシピエントに必要な検査、診察を行います。

4. 手術

検査の結果、医学的な問題がなければ、移植が行われることになります。ドナーから提供された腎臓は、右下腹部の骨盤腔内に移植されます。手術は通例3~4時間で終わります。
  1. 生体腎移植では、ドナーの片側の腎臓を摘出して、レシピエントに移植しますが、通常は機能のよいほうの腎臓を残します。
  2. ドナーからの腎臓摘出手術に90%の施設は内視鏡を使用しています。高度な技術を要しますが、従来より小さい傷ですみ、入院期間も短縮されます。
  3. ドナーから摘出した腎臓はレシピエントの下腹部に、血管と尿管を吻合して移植します。レシピエント自身の腎臓は通常、そのままにしておきます。

献腎移植の場合は、透析または通院している施設の主治医に相談し、移植希望施設を選びます。移植希望施設を受診し、説明や手続きを経て日本臓器移植ネットワークに登録します。
詳しくは(公社)日本臓器移植ネットワークのホームページ

5. 腎臓移植後

生体腎移植では、手術中か手術直後から腎臓が働いて尿が出始めます(献腎移植 の場合には腎臓を摘出してから移植されるまでに時間がかかっているため、必ずしも移植直後から尿が出るとは限りません。そのため、尿が出るまでの期間は透析療法を受けることがあります)。
手術後3~4週は入院が必要です。退院後の通院頻度は、移植後3~4ヵ月は週に1~2回、それ以降は月に1回程度となります。
手術後は、移植した腎臓が拒絶反応を起こさないように感染症にならないように管理することが重要です。拒絶反応を抑えるために、免疫抑制剤を飲み続ける必要があります。

6. 免疫抑制剤

免疫抑制剤には多くの種類があり、通常複数の薬を併せて使います。 免疫抑制剤は免疫反応を抑える働きをしますから、逆に感染症にかかりやすくなる危険があり、肺炎などが問題になります。また免疫抑制剤自体の副作用もあるので、使用量が多すぎてもいけません。このバランスを取ることが非常に大切で、血中の薬物濃度を調べながら適切な投薬量を決めます。
移植後、3カ月をすぎると安定期に入り、免疫抑制剤の使用量は減少します。さらに年月がたつと、より少量ですむようになります。

7. 費用と制度

なお、国内で腎臓移植を受ける場合は、多くの場合、医療保険のほか、特定疾病療養制度、更正医療などの対象となるため、医療費に関してはほとんど自己負担はかかりません。腎臓移植をして正常な腎機能になっても慢性腎不全という病名および身体障害第1級はそのままです。ただし障害年金は移植後1年目で腎機能が正常になっていれば、そのまま打ち切られます。

さらに詳しい情報は、(公社)日本臓器移植ネットワークのホームページ