病気の基礎知識

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Q1

ネフローゼとはどのような病気ですか。

回答
ネフローゼ(症候群)は、特定の一つの疾患ではなく、さまざまな病気が原因となって起こる、同じ症状を持つ疾患群を指します。「高度のたんぱく尿」と「低たんぱく血症」がみられ、そのために生じる「むくみ(浮腫)」や、「脂質異常症」が特徴です。ネフローゼ症候群の原因となる疾患は、腎臓自体の病気である糸球体疾患(原発性・一次性)が最も多く全体のほぼ80%を占めています。また、他の疾患に続いて起こるもの(続発性・二次性)としては、代謝性疾患(糖尿病など)、膠原病とその類縁疾患、感染症、悪性腫瘍などがあります。年齢により原因疾患の発症頻度は異なります。
小児で最も多いのがリポイドネフローシス(または微小変化型ネフローゼ症候群)です。急に激しくむくむのが特徴で、副腎皮質ステロイド薬がよく効くことが多いタイプです。再発を繰り返すこともしばしばありますが、原則として腎臓の機能が低下することはほとんどありません。成人では膜性腎症、アミロイド腎症、糖尿病性腎症などが多くなります。また、高齢者では続発性(二次性)のネフローゼ症候群が多いのも特徴です。膜性腎症は原発性の場合もありますが、二次性の原因として悪性腫瘍が隠れている場合もありますので、特に高齢者の膜性腎症では悪性腫瘍の精査が必要になります。

Q2

IgA(アイジーエー)腎症とはどのような病気ですか。

回答
腎臓の糸球体に免疫グロブリンのIgAというたんぱくが沈着している糸球体腎炎です。日本人に多いとされています。初期は無症状で、学校検尿および職域検尿でたんぱく尿または血尿で発見されます。急性上気道感染症(風邪など)を伴った場合には、肉眼的血尿(コーラ色の血尿)が見られることもあります。IgA腎症の患者さんで、病気がどのように進行して行くか(予後といいます)については、腎生検での組織所見と尿所見の程度によってある程度予想できます。腎生検(腎臓の組織検査)の所見で糸球体の増殖性変化と尿細管間質障害の程度が強い場合、たんぱく尿が多くでている場合、尿の中にいろいろな円柱が見られる場合、血圧のコントロール悪い場合などでは、時間とともに次第に腎機能が低下して、腎不全の症状が出る可能性が高くなります。

Q3

慢性糸球体腎炎の場合、透析は必ず必要になるのですか。

回答
慢性糸球体腎炎と呼ばれる病態にはとても多くのタイプが含まれており、また同じタイプの病態であっても患者さん一人一人で進行度や重症度が異なっています。ですから、「慢性糸球体腎炎だから透析が必要になる」などということは全くないのです。しかし、なかには腎機能の低下が進みやすいタイプも含まれています。また、病気の診断がつくのが遅くなって腎臓の機能がすでに低下してしまってからでは、治療の効果も得られにくくなってきます。ですから、もしも健康診断などで慢性糸球体腎炎の可能性を指摘された場合(血清クレアチニン値の上昇や、尿蛋白・尿潜血が陽性、などです)には、自分一人で頭を悩ませずに、早めに再検査を受けて必要に応じて専門医を受診することが最も大切なことなのです。検査を受けて慢性糸球体腎炎であると判った場合であっても、病態に応じた適切な治療を始めるのが早ければ早いほど、腎機能が低下することを未然に防いだり、または病気そのものを治してしまったりたりすることができる可能性が高くなります。

Q4

慢性糸球体腎炎の食事療法での注意点は何ですか。

回答
たんぱく質を制限することが基本です。これに加えて、塩分摂取量の制限と1日に必要なエネルギー摂取量を確保することも心がけてください。病気が進行して、腎臓の機能が低下してきた段階では、体内に溜まりやすくなるカリウムリンの摂取量を制限することや、水分摂取量をコントロールすることも必要となります。

Q5

慢性糸球体腎炎になった場合、なぜ食事中のたんぱく質を減らす必要があるのですか。

回答
腎不全の進行をおさえるための食事療法として、食事全体のカロリーを保ちつつ、たんぱく質を抑えることの重要性が実証されています。たんぱく質の摂りすぎは体内に老廃物を蓄積することになり、弱った腎臓にさらに負担をかけます。しかし、制限しすぎて逆に摂取不足になると体重や筋肉の減少をもたらし、かえって体調不良の原因になります。腎機能を低下させないためにも、たんぱく質摂取量を適切にコントロールすることはとても重要です。

Q6

糖尿病性腎症とはどんな病気ですか。

回答

糖尿病で日常の血糖管理がうまくいかない状態が続くと腎臓が悪くなる合併症です。進行すると腎臓が機能しなくなり(末期腎不全)、透析療法を受けなくてはならなくなります。現在透析を受けている方の原疾患で一番多いのは糖尿病性腎症です。

腎臓は糸球体という細い血管が集まった組織で老廃物を除去していますが、高血糖が続くと糸球体の細い血管が狭くなり老廃物を十分にろ過できなくなってしまいます。高血圧、たんぱく質や塩分の多い食習慣、肥満、脂質異常症などがあると腎症はどんどん悪化していきます。

糖尿病性腎症は自覚症状がないままに進行していきます。たんぱく尿がでたり、身体に異常がでるようになるのはかなり進んでからです。しかし早い段階で尿に微量なアルブミンが出ることがあるので、これを高感度の検査法で見つけ出すことで発見することができます。糖尿病の人は、主治医と相談して年に1回は微量アルブミン尿検査を受けたほうがよいでしょう。

糖尿病を発病し、血糖管理が悪い状態が続くと、だいたい10年くらいで腎症が発生すると考えられています。腎症が発見されると、これまでの血糖コントロールや血圧の治療に加えて、腎症に合わせた治療や食事療法が必要になります。低たんぱく食などこれまでの糖尿病の食事療法とは異なるため混乱する人が多いので、管理栄養士とよく相談し腎臓にやさしい食事に切り替えていきましょう。

参考:

糖尿病性腎症 1
糖尿病性腎症 2
腎臓教室:「糖尿病性腎症 ~進行を抑えるために~」(2012年8月)

Q7

多発性のう胞腎とはどんな病気ですか。

回答

遺伝的な病気で、腎臓にたくさんの水袋みたいなもの(のう胞)ができる疾患です。親の片方がこの遺伝子を持っていると、性別に関係なく50%の確率(2人に1人)で遺伝します。

のう胞ができても大きくならなければ気がつかずに一生を終える人もいますが、約半分の人は年々のう胞が大きくなり腎臓の機能を圧迫するようになります。腎臓の働きが悪くなるのは、個人差はありますが、だいたい30才代からで、血尿、腹痛・腰背部痛、腹部膨満などが見られます。腎臓だけでなく肝臓やほかの臓器にのう胞ができることもあり、高血圧や脳動脈瘤などの合併症を伴う人も多いです。徐々に腎機能が低下し、多くは70才までに腎移植または透析療法が必要となります。

多発性のう胞腎の診断は、家族(両親、祖父母、兄弟)に同じ病気の人がいることを確認したうえで、超音波やCT、MRIによって両方の腎臓に5個以上ののう胞が存在することで確定されます。高血圧治療のほかに特に治療法がありませんでしたが、最近では薬もでき、専門医を受診することで積極的な治療を受けることもできるようになりました。

透析治療を選択するさいは、のう胞がお腹のなかで大きくなっているため腹膜透析はできないと考えられていましたが、最近では患者の状況により腹膜透析もできるようになりました。

参考:

腎臓教室「のう胞腎について」(2009年4月)

Q8

腎硬化症とはどんな病気ですか。

回答

腎硬化症は腎臓が萎縮し小さく硬くなってしまう状態で、悪性腎硬化症と良性腎硬化症があります。ひどい高血圧のため短期間に腎機能が低下するものを悪性腎硬化症、高血圧が長期間続くことでだんだんと腎機能が低下していくものを良性腎硬化症と呼びます。近年、患者さんの高齢化などにより増加しており、現在では日本の透析導入原因の第3位です。加齢による影響などさまざまな要因が考えられ、研究が進められています。

腎硬化症は他の腎疾患とは異なりたんぱく尿が少ないことが特徴です。高血圧の人では血液検査でクレアチニンを測定しeGFR(推定糸球体濾過値)が60%未満の人では腎硬化症が疑われます。自覚症状はほとんどなく、高圧治療が中心になります。

腎硬化症で腎不全になった患者さんは、腎臓以外にも身体中の動脈硬化が進行していることが多く、心筋梗塞や脳卒中などの危険性が高いと考えられます。従来は高齢者の疾患でしたが、最近ではメタボリック症候群などの増加により、働き盛りの30代の患者さんも増えています。

参考:

腎臓教室「腎硬化症」(2008年10月)

Q9

腎臓のはたらき:軽度低下とはどのくらい?

回答

軽い腎障害はありますが、腎臓の働きを表すeGFRは60~89、健康なときと比べ腎臓の60~89%が機能しておりほぼ正常といえます。CKDステージ2にあたります。

あなたの腎臓はどのくらい働いている?

日本腎臓学会のWebサイトでは、血液検査のクレアチニン値と年齢・性別から簡単に自分の腎臓の働き(eGFR)が分かります。

詳しくはこちら。 ※日本腎臓学会のサイトへリンクします。

この時期では自覚症状はほとんどありませんから、ほとんどが健康診断などで発見されます。きちんと健康管理をして危険因子を減らすことで腎機能が回復することもある非常に大切な時期といえます。
腎臓専門医への受診が勧められるケースとまだ大丈夫というケースがありますが、まず腎臓の働きが弱っている原因を調べ、原因ごとの対応をするべきでしょう。尿検査でたんぱく尿血尿が両方でている場合は腎臓専門医を受診しましょう。糖尿病や高血圧、腎炎がある人で微量アルブミン尿やたんぱく尿がある場合も専門医を受診。糸球体腎炎の場合は腎臓専門医による精密検査が必要となります。

基本的な治療は、禁煙、減量、運動、食事での塩分とカロリー制限など、生活習慣を改善することです。たんぱく尿が多い場合はたんぱく質制限もおこないます。必要があれば管理栄養士による栄養指導も受けておいた方がいいでしょう。食事だけで改善されない場合は血圧管理、脂質管理、糖尿病管理のための薬物療法もおこなわれます。

Q10

腎臓のはたらき:中等度低下とはどのくらい?

回答

腎臓の働きを示すeGFRは30~59、健康なときに比べ腎臓の機能が半分近くに低下している段階で、CKDステージ3にあたります。患者さんの数がもっとも多いステージで、原因疾患がなくても加齢に伴い腎機能が低下した人も少なくないと考えられています。

あなたの腎臓はどのくらい働いている?

日本腎臓学会のWebサイトでは、血液検査のクレアチニン値と年齢・性別から簡単に自分の腎臓の働き(eGFR)が分かります。

詳しくはこちら。 ※日本腎臓学会のサイトへリンクします。

この段階では自覚症状が現れ始め、腎臓専門医の治療が必要となります。腎臓の機能が低下してくると血液中の水分や電解質バランスが狂い、むくみが表れたり、カリウムが排出されにくくなり手足がつるなど筋肉の症状がでたりします。尿の生産機能が衰え夜間にたくさんの尿(夜間尿といいます)が出るようになったり、造血ホルモン(エリスロポエチン)の産生が低下し貧血(腎性貧血)になり、顔色が悪く疲れやすくなったりします。

ここで生活改善を徹底し適切な治療をおこなえば、腎機能の低下を抑えられることもあり、将来透析導入にならないためには非常に大切な時期でしょう。治療の基本は、原因疾患を適切に管理し、さらに食事療法を含む生活習慣の改善、薬物治療の3つです。

Q11

腎臓のはたらき:高度低下とはどのくらい?

回答

腎臓の働きを示すeGFRは15~29と30%以下まで低下しています。CKDステージ4にあたり、機能を回復させることができない段階と考えられます。腎臓の機能がほとんどなくなる末期腎不全になるのを遅らせることが目的ですが、同時に末期腎不全の治療法(腎代替療法:腹膜透析、血液透析、腎移植)について考え始める時期です。

あなたの腎臓はどのくらい働いている?

日本腎臓学会のWebサイトでは、血液検査のクレアチニン値と年齢・性別から簡単に自分の腎臓の働き(eGFR)が分かります。

詳しくはこちら。 ※日本腎臓学会のサイトへリンクします。

残存腎機能(残っている腎臓の機能)はさらに低下し、むくみ、尿の減少、高血圧、貧血なども悪化してきます。体内に老廃物がたまりやすく、頭痛、食欲不振、嘔吐、不眠などさまざまな尿毒症の症状が現れることもあります。脳・心血管病を合併している人では、血圧調節に関わる腎臓の機能が低下するため、高血圧に特に注意が必要です。

これ以上の腎機能の悪化を防ぎ、透析療法の開始を遅らせることが目的となります。原因疾患の治療とともに、より厳格な食事療法や生活習慣の改善、薬物療法により尿毒症や合併症を治療します。

参考:

「そろそろ透析が必要です」と言われた方へ
新しい透析医療の考え方
腹膜透析
血液透析
透析なんでもQ&A
二つの透析の比較
腎臓移植

Q12

腎臓のはたらき:末期腎不全とはどんな状態ですか。

回答

末期腎不全はCKDステージ5にあたります。腎臓の働きを示すeGFRは15未満とほとんど機能していない状態で、腎臓の代わりをする治療(腎代替療法:腹膜透析・血液透析・腎移植)が必要になります。

参考:

「そろそろ透析が必要です」と言われた方へ
新しい透析医療の考え方
腹膜透析
血液透析
透析なんでもQ&A
二つの透析の比較
腎臓移植

Q13

腎代替療法とはなんですか。

回答

腎臓が機能しない末期腎不全の状態になったら、腎臓の代わりをする治療をしなければなりません。これを腎代替療法といい、腹膜透析、血液透析、腎移植があります。

参考:

「そろそろ透析が必要です」と言われた方へ
新しい透析医療の考え方
腹膜透析
血液透析
透析なんでもQ&A
二つの透析の比較
腎臓移植