~CTデータから作られた移植腎の3D画像をVRで体験!~
移植腎を実感し、健康管理に活かしてほしい!

2019年2月

1月22日、『Meetthe腎』というVR(バーチャル・リアリティ)体験会が世界で初めておこなわれました。移植された腎臓のVR画像を、移植患者本人とドナー(腎臓提供者)に体験をしてもらうもので、働かなくなってしまった腎臓と生き生きとした移植腎の違いがリアルに実感できました。

いきいきした移植腎を実感!

 VR(バーチャル・リアリティ)は3D映像を体感することができる先端技術で、ゲームなどに使われていることが知られています。それが今、医療分野で使われることが増えています。熟練の医師の手術をVR動画に記録し、若手医師がトレーニングするというのは聞いたことがある人もいるでしょう。
 VR技術を使って自分の腎臓と対面したのは林啓子さん(55)。昨年5月にお母さんの俶子さん(79)の提供で腎移植をしました。移植後の検査で撮影したCTスキャンデータから「HoloEyesXRサービス」というシステムを利用してVR画像を生成。林さんが大きなゴーグルのようなものをつけると、空間に自分の身体の内部が再現されました。見るだけではなく、実際に身体のなかに入っていくような体験もでき、腎臓や周りの臓器、骨などを間近に感じることができました。もう働かなくなってしまった腎臓2個と移植腎1個と対面し、もともとの自分の腎臓が「小さくなって、干からびている」のに対し、移植腎が「生き生きとしている」ことにびっくりし、移植したことを改めて実感したといいます。
 林さんの主治医である東京医科大学八王子医療センター腎臓移植チームの今野理先生は、「手術をするときにはCT画像だけでは分からないところもあり、3Dで確認することで安全性が高まります。また看護師の術後のケアに役立つことも多い」とVRの利用価値について述べました。

紫色が小さくなってしまった腎臓。「ピンク色の移植腎を大切にしなくては」、と林さん

VR技術の利用には精神的な効果も!

 VRの医療利用は世界的にも注目されています。腫瘍を取り除く手術では、どんな腫瘍がどこにあるのか、形や場所、周りの状況を正確に把握することができます。患者に病状や治療の説明をするときにも、理解しやすく安心感を持ってもらえる精神的な効果もあるそうで、実際に疼痛や不安が軽減されたという報告もされています。今回の体験会も、移植後に自分の体で働く腎臓を意識することで、健康管理や生活習慣について意識して欲しいという意図でおこなわれたものです。
 実際、体験者の林さんはいただいた腎臓のありがたみを実感し、「保存期のころから腎臓がだめになるということがすごく大変なことだと身をもって体験し、10年近く透析をしてきましたが、今、元気になって、そのありがたみを忘れてしまうかもしれない。ときどきこれを見て気持ちを新たに、食事とか気をつけたほうがいいことは全部やって、母にも恩返しして、100才まで生きるつもりです」と話しています。
 「HoloEyesXRサービス」担当者の工藤琢也さんは、「最先端の技術で腎移植領域では初めての試みでしたが、近い将来、CTを撮った直後にVR画像を見ることが当たり前のようになる」と、VR技術は今後の医療に大きく貢献するだろうと期待を語りました。

※「2019年2月号そらまめ通信」より

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