腎臓教室 Vol.109 – 腎臓サポート協会WEB

腎臓教室 Vol.109

慢性腎臓病(CKD)の保存的治療と教育入院

残された腎臓の機能が低下し将来透析が必要となるだろうという状態を腎不全保存期というのはご存知ですね。透析導入を遅らせるためにはとても大切な時期ですが、症状があまりないため、自覚をもって治療に専念するのが難しい時期でもあります。保存期の治療法とそれを実践的に学ぶための教育入院について、腎臓専門医の頼先生に教えていただきました。

“東京医科歯科大学茨城県腎臓疾患地域医療学講座教授 頼 建光 先生

はじめに

 慢性腎臓病(CKD)とは自覚症状がないまま腎臓の機能が低下している状態か、たんぱく尿などの障害が3ヵ月以上続くことをいいます。慢性腎炎、糖尿病、高血圧症などさまざまな原因によって起こります。長い期間にわたり腎障害が続くと、腎機能が低下して末期の腎不全に至り、透析療法や腎移植が必要となります。また、CKDは心筋梗塞、心不全や脳卒中などの心血管疾患や、死亡のリスクを上昇させることが知られています。

CKDの治療

 CKDの患者さんにとって、透析に至らない治療、すなわちCKDの進行を止める治療はまさに望んでやまないものであると思います。CKDの多くは自覚症状に乏しいのですが、血液・尿検査で診断が可能です。このため健康診断や医療機関での検査によってCKDを早期に診断し、適切な治療を行うことでCKDの重症化を防ぎ心血管疾患の発症を抑制することが重要です。CKDの治療は以下の2つに大別することができます。

(1)CKDの原疾患に対する治療 (2)CKDの保存的治療

(1)のCKDの原疾患に対する治療とは、腎臓を障害しているそもそもの原因となっている病気に対する治療で、副腎皮質ステロイド薬、免疫抑制薬、抗血小板薬、抗凝固薬などが使われます。一方、(2)のCKDの保存的治療とは、原因疾患の種類を問わず、CKDの進行を予防し、少しでも透析療法への移行を遅らせるための治療を指します。

CKDの保存的治療の2つの目標

 CKDの保存的治療の目標の1つは腎機能障害の進行を緩やかにし、少しでも透析療法への移行を遅らせることにあります。CKDは進行性の疾患で、腎機能の低下がある程度進行してしまうと、残念ながらそれを元に戻すことは困難です。従って、薬物療法や食事療法、病状に合わせた運動療法により、少しでも進行を遅くさせることが目標です。
 もう1つの治療目標は合併症の予防です。CKDの進行とともにいろいろな合併症が現れます。なかには、生命をおびやかすようなものもあります。例えば高血圧が持続するような場合には、腎臓にも悪影響を及ぼすと同時に、生命にかかわる心臓病や脳卒中などの合併症の原因となります。さらに生命にかかわることはなくても、不適当な食事療法などを行うと筋肉が減ったり骨がもろくなる、などの合併症が現れます。保存的治療は単に進行を遅らせることだけが目的ではなく、これらの合併症が現れないようにすることも大きな目標となります。

CKDの保存的治療の実際

 CKDの保存的治療には食事療法、生活習慣の改善、薬物による血圧・血糖・脂質の管理など、多方面にわたる治療を根気よく行うことが必要です。治療に当たっては、腎機能障害の程度を、ステージ1から5までの5段階に分け、そのステージに応じた治療計画を立てていきます。ステージ分類の指標となるのが糸球体濾過量(GFR)です。GFRは腎臓が老廃物を尿に排泄する能力を示しており、値が低いほど腎臓の働きが悪いことを示しています。

(1)栄養指導

 腎臓を守るために必要な食事療法については管理栄養士よりアドバイスいたします。腎臓病食の基本は高カロリー、減塩、タンパク質制限です。繰り返し指導を受けていただくことにより患者さん自身で食事療法を実践できるようにお手伝いいたします。

表1CKDステージと食事療法(「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版日本腎臓学会編」より引用改変)


表1栄養指導の様子   表1療養指導の様子

(2)糖尿病透析予防指導(療養指導+栄養指導)

 糖尿病が原因でCKDとなった患者さんには、栄養指導に加え、糖尿病療養指導士や腎臓病療養指導士による療養指導を行います。このなかで患者さんの日常生活や運動についても指導を行い、医師の診察だけではなく、看護師と管理栄養士も協力して、患者さんの腎臓を守るためのアドバイスをいたします。看護師と管理栄養士が積極的に治療介入することは、一人ひとりの患者さんにあった治療法を提案できるため大変有効です。

薬物治療

 CKDのステージが進むにつれて、治療に必要な薬の種類も増えてきます。主な薬は以下の通りです。
薬名 効果
腎機能を保護する治療薬 レニンアンジオテンシン系阻害薬 血圧を上昇させるホルモンを抑え、血圧の上昇を防ぐとともに、腎臓の負担を減らす
危険因子のコントロールをする治療薬 高血圧治療薬 血圧を下げるために、適した降圧薬を組み合わせて使う
脂質異常症治療薬 血液中のコレステロールを下げる
高尿酸血症治療薬 尿酸排出促進薬と尿酸生成抑制薬の2つを組み合わせて使う
腎臓の働きを補佐する薬 利尿薬 体に溜まった水分と塩分を、尿として体の外に出す
エリスロポエチン製剤 赤血球をつくるホルモンであるエリスロポエチン分泌の低下を補佐し、貧血を改善する
カリウム吸着薬 血液中のカリウム量を減らす
重炭酸ナトリウム 血液の酸性化を防ぐ
活性型ビタミンD3 ビタミンDの活性を補佐し、骨がもろくなるのを防ぐ
リン吸着薬 消化管内でリンを吸着して体外に排出する

教育入院

 患者さんの腎臓を守るために、まず患者さん自身が自分の病気をよく知り、病気にとって何が良くて何が良くないのかを理解することが重要です。理解していないと、ただ「こうしなさい」といわれてもなかなか長続きしないものです。筆者が診療を行っている施設では、患者さんにCKDについて十分理解し、保存的治療を身につけて頂くために教育入院を行っています。教育入院では10日間前後の短期の入院期間で以下のことを集中的に行います。 表1入院中の減塩教室の様子
 患者さんの腎臓を守るために、まず患者さん自身が自分の病気をよく知り、病気にとって何が良くて何が良くないのかを理解することが重要です。理解していないと、ただ「こうしなさい」といわれてもなかなか長続きしないものです。筆者が診療を行っている施設では、患者さんにCKDについて十分理解し、保存的治療を身につけて頂くために教育入院を行っています。教育入院では10日間前後の短期の入院期間で以下のことを集中的に行います。

表1入院中の減塩教室の様子

  • CKDという病気についての知識を深める
  • 心血管病を中心とした腎臓病に伴う全身合併症を調べる
  • 最適な薬物治療の組み合わせについて再確認する
  • 管理された入院食で腎臓病食を体験していただく

腎臓内科専門医、看護師、栄養士、薬剤師など各方面のエキスパートが、患者さん個々の状態に合わせて相談しながら治療にあたります。実際、教育入院後に腎機能悪化の速度が緩やかになった方が大勢いらっしゃいます。東京近郊で興味のある患者さんは、気軽にご相談ください。
(問い合わせ先:https://tmd-kid.jp)
(*ほかに教育入院をしてくれる施設については、住む地域の大学病院や、行政機関に問い合わせて探してみてください。)

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