腎臓教室 Vol.110(2020年4月号)

〜加工食品の落とし穴〜
リン管理の秘訣

食事には気をつけているのに、血液中のリンの値が増えてしまうという方も多いのではないでしょうか。肉や魚などのたんぱく質を控えていても、ハムやベーコン、練り物やインスタント麺などの加工食品にもリンが入っていますので、気をつけなければなりません。腎機能が低下している方のリン管理の秘訣について、管理栄養士の市川和子先生に教えていただきました。

川崎医療福祉大学 医療技術学部 臨床栄養学科 市川 和子 特任准教授

1. 血液中のリン量が多いと、骨粗鬆症になったり動脈硬化が進みます

 腎臓機能が低下すると体外にリンをうまく排泄することができなくなり、血液中のリン値が上昇します。「高リン血症」となると副甲状腺ホルモンの分泌が過剰となり骨のカルシウムが血液中に溶け出し、骨がもろくなり骨折しやすくなります。また血液中のリンと結合して血管壁に沈着して血管石灰化や動脈硬化を招きます。引いては生命予後にも大きく影響するといわれています。

2.早めにリンを意識した食事に切り替えましょう

 血液中のリン値は、腎機能が1/3程度まで低下しないと高値になることはありませんが、リン含有量が多い食品や過剰なたんぱく質の摂取により腎機能の低下を進行させる結果になります。よって、腎機能の低下に応じてたんぱく質が過剰にならないように調整することが重要です。主治医に相談し、栄養士から具体的な指導を受けることをお勧めします。

3.普段からリンが少ない食品を覚えておきましょう

 筋肉のもととなるたんぱく質は十分摂取しなくてはなりませんが、たんぱく質を多く含む食品には、リンが多く含まれています。そこで、食品を選別する際には、たんぱく質(g)当たりのリン含有量(㎎)の少ないものを知っておく必要があります。(図1)

図1.玄米は身体に良いイメージですが、リンは多いので、リン制限をしている人は無洗米のほうがいいでしょう。そばよりうどん、卵黄よりも卵白のほうがリンが少ないのがわかります。日頃から食品成分表をみて、リンが少ない食品を覚えておきましょう。

4. 有機リンと無機リンの違い

 有機リンは、肉や魚介類、卵、乳製品などの食品そのものに含まれているリンです。それに対し、無機リンは、ハムやベーコン、練り物、チーズ、インスタント麺、缶詰、ファーストフードなどの加工食品に食品添加物として使われています。
 無機リンは有機リンに比べて、腸から吸収されやすく、血液中のリンの濃度(血清リン濃度)が上昇しやすくなります。そのため、全体のリンの摂取を抑えるためには、無機リンが多く入っている可能性のある食品添加物入りの加工食品はできるだけ避けた方が望ましいです。
 ただ、食品添加物については成分表示が義務づけられていないため、食品にどれだけ無機リンが含まれているかがわからないのが実情です。

 同じウインナーでも、リン含有量はいろいろです(図2)。できるだけ成分表示がされているものや無添加のものを選びましょう。
 また、わずかですが、調理(茹でる)過程でリン含有量を10%程度減少できますが、カリウムのようにたくさん減らすことはできません(図3・4)。

5. リン管理の秘訣は、リン吸着薬を上手に使うこと

 リン吸着薬の目的は、摂取した食物のリンを胃もしくは腸管で結合させて便として排泄を促すことです。よって、食物が消化管内にあり結合しやすい状況にあることが求められます。そこで、このリン吸着薬の服用のタイミングが重要となります。更に食事内容によってもリン含有量の多い食事と少ない食事では、同じ量を服用しても吸着効率に差が生じます。よって、自身の食事内容を十分確認して服用のタイミングや量の調整が重要なポイントと考えられます。図5のように、食事のパターンによって、リン吸着薬を服用する量を調節しましょう。

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