腎臓教室 Vol.117(2021年7月号)

腎臓病の種類と進行度を特定するための腎生検とは

腎臓病かどうかは血液と尿検査からわかります。腎機能が低下している、あるいは尿に異常(特にたんぱく尿)がある場合に、慢性腎臓病と診断されます。その原因の腎臓病には多くの種類があります。その種類や病気の活動性を明らかにし、治療方針を決める時に、腎生検が必要となります。
日本で腎生検がおこなわれるようになったのは1954年ごろからで、2018年には全国で約4,400名の方が受けられています。医師から「腎生検をやりましょう」と言われると、患者さんは「痛そうで不安だ」「入院もしなければならず大変だ」と思われて、抵抗を感じる人も少なくありません。検査が必要になった場合に備えて、正しく知っておきましょう。

監修:原 茂子 先生
原プレスセンタークリニック院長

腎生検の目的

 腎生検の目的は、次の3つがあげられます。

  ●腎臓の組織の一部を採取して、顕微鏡観察で腎臓病の種類が診断されます。
  ●腎臓病の種類のみならず病気の進み具合もわかります。
  ●それらの結果で治療方針がたてられます。

腎生検でわかる腎臓病の種類には

 IgA腎症、膜性腎症、血管炎、ループス腎炎、巣状糸球体硬化症、微小変化型、糖尿病性腎症、腎硬化症、間質性腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、紫斑性病性腎炎、アミロイドーシス、骨髄腫腎などが特定されるとともに、それぞれに最適な治療方針を立てることができます。2007年から11年間に、全国でおこなわれた腎生検を集積した結果が2018年に報告されました。腎臓病で最も頻度が高いのは、IgA腎症、次いで血管炎、第3番目は膜性腎症でした。高齢化にともなって、膜性腎炎や血管炎が増えています。この全国調査には含まれていませんが、移植腎の状態を把握するためにおこなわれる腎生検も増えています。

腎生検がおこなわれる場合

 腎生検は以下のような症状のある人におこなわれます。
 ただし、これらに該当する人全員に必ずおこなわれるわけではありません。

たんぱく尿や血尿が続く人(慢性腎炎が疑われる人)
1日0.3~0.5g以上のたんぱく尿が続く人
大量のたんぱく尿や浮腫がみられる人(ネフローゼ症候群が疑われる人)
原因不明または急に腎機能が低下した人(血管炎や急速進行性糸球体腎炎が疑われる人)
全身性の病気(膠原病など)をもっている人で腎臓への合併症がみられる人

腎生検がおこなえない場合

長期に腎機能の低下が認められ、すでに腎臓が小さくなり萎縮している場合
多発性嚢胞腎の場合
コントロール困難な出血の傾向や高血圧、尿路感染症を併発している場合など
腎臓が一個しかない(片腎)場合

腎生検の方法

1. 超音波を用いての生検(エコーガイド下腎生検)

 超音波を用いて腎臓の位置を確認しながら実施されます。局所麻酔でおこなう方法です。
 病院により検査場所や検査後の対応も異なりますので、それぞれの病院のアドバイスに従ってください。

入院期間:通常は数日間の入院が必要  場所:病棟の検査室など

具体的な検査の流れ
患者さんは検査室に入り、ベッド上で伏臥位(うつぶせ)の体勢になります。腎臓は背中側にあるためです。
超音波で見ながら腎臓の位置を確認します。腎臓は呼吸で上下に動きます。医師の指示に従って息を吸ったり、止めたり、吐いたりします。
腎臓周辺及び針を刺す部位に局部麻酔をおこないます。
超音波スキャナーを使いながら生検用の特殊な針を背中から刺します。
生検針が腎臓の真上に達したところで数十秒間息を止めます。
腎臓の組織を数カ所から採取します。(検体は鉛筆の芯ほどの太さで、長さは1~2㎝程度です)
腎生検終了後5~10分間、背中から腎臓を圧迫して止血します。検査時間は約30分間(採取に10分間、準備と後片付けに20分間)です。

腎臓教室117

 検査後はうつぶせのまま1~2時間安静にします。その後は、あおむけあるいは横になります。食事、トイレはベッド上でおこないます。24時間後には、安静が解除されます。それぞれの病院や患者さんの状態によって対応が異なります。




2. 開放腎生検

 超音波下での生検がおこなえない患者さんや、リスクが高い患者さんの場合には手術室でおこないます。利点は、腎臓を直接見ながら組織を採取ができるので、確実でしかも止血も十分におこなえることです。不利な点は、全身麻酔や硬膜外麻酔などが必要な場合があり、お腹の脇側を5㎝ほど切開するので、痛みや感染の可能性があることです。

腎生検の合併症

●出血と血尿
生検部位からの出血と血尿です。針を刺した腎臓表面の周囲に出血する(血腫という血の塊りができる)場合があります。安静により自然に吸収されます。
●疼痛
生検時には麻酔をかけていますので痛みはありません。生検後、針を刺した部分や腎臓にやや痛みを感じることがあります。
●麻酔薬のアレルギー
まれに麻酔薬に対するアレルギーをもっている人がいます。腎生検前に医師にご相談ください。
●腰痛
腎生検終了後はベッド上で長時間安静となるので腰痛を訴える方もいます。適宜鎮痛薬などが処方されます。

腎生検後に注意すること

 退院後3週間くらいは再出血を避けるため、重いものを持ちあげたり、激しい運動をすることはできるだけ避けてください。

コラム

腎生検をしないで尿や血液を解析することで確定診断ができないだろうかと、腎臓の診療にかかわっている医師は常に考えています。腎臓病の種類や進行度を診断する ことは徐々に進歩してきていますが、まだまだ研究段階です。基礎研究の先生や、診療にかかわっている先生方とのチームワークで、それが可能となるようにと願っています。
腎臓病の種類の診断とそれに基づいた治療を受けられること、それがご自身の腎臓を大切にすることへの第一歩につながります。その基本として腎生検は重要な検査です。

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