腎臓教室 Vol.62(2012年4月号)

腎臓の負担を軽くするヒント 食事療法は、最良の治療!

監修 蒲池 桂子先生
女子栄養大学 栄養クリニック教授 管理栄養士 栄養学博士 日本病態栄養専門士

 食事療法については、今まで何度も特集を組んでお伝えしてきましたが、ここでもう一度初心に返ってみましょう。基本をきちんと押さえて毎日続けることが、腎臓を長持ちさせる、最良の治療となります。

オーダーメイドの献立

体調や検査値を見ながら、自分にあった食事療法を心がけましょう。

 食事制限は、腎臓病の種類や症状、進行の程度によって一人ひとり異なります。塩分制限、タンパク質制限、カリウム制限など、主治医や管理栄養士から指導されたら、自分の好きな食べものや食事の傾向をもう一度振り返り、自分に合った献立にすることで、長続きする食事療法ができるはずです。

塩分 とりすぎは高血圧になり、腎臓を傷めます。
エネルギー 不足すると、体内のタンパク質が消費され、体力が落ちます。
タンパク質 消化・吸収されたあとに残った老廃物は、腎臓の負担になります。
カリウム 筋肉や神経の機能を助けるミネラル。
腎機能が低下すると、体内に溜まりやすくなり、手足がしびれたり、心臓に不整脈がでたりします。
リン 骨や歯を作ったり、エネルギーを作る助けをします。
腎機能が著しく低下すると、血液中に増えたり、体内に溜まり、骨粗鬆症や骨軟化症になりやすくなります。

【ヒント1】 食べたものを書きだすことから始めましょう

 記録するだけで、偏食や食べ過ぎなど、自分の食生活の問題点がわかります。塩分やエネルギー量も把握できるので、1食毎ではなく、1日3食で制限内になるように調整すると、少し自由度が広がります。また記録しておくことで、日をおいて同じ献立を作るときの参考にもなります。

【ヒント2】 栄養成分について理解しましょう

 どの食品にどのくらいの栄養成分が含まれているのかを知ると、何をどれだけ食べて良いのかが分かるようになります。食品成分表や食品交換表を利用すると、献立を立てやすくなるので、利用してみましょう。

【ヒント3】 エネルギー(カロリー)を十分とりましょう

 食事制限をしていると、エネルギー不足になりがち。エネルギー補給を意識しましょう。少量でも高カロリーのサラダ油やバター、粉飴などを利用すると効果的。しかし脂肪のとりすぎで、肥満や血中コレステロールが上昇すると逆効果です。摂取エネルギー量は、体格や、運動量、労働量によって異なります。

【ヒント4】 塩分制限は正確な計量が肝心

 肉や魚など食材に含まれる塩分、調味料や加工品に含まれる塩分の合計で計算します。食塩小さじ一杯が約5g、醤油小さじ一杯が約1g、味噌大さじ一杯が約2.3g(信州味噌の場合)、1.8g(麦味噌、八丁味噌、白みそ)と、調味料の目安を覚えておきましょう。新鮮な食材を使い素材の味を生かしたり、だしの利用、香辛料や酢を使い、薄味でもおいしくする工夫を。かまぼこやインスタント食品など加工食品は塩分が多いので要注意です。

【ヒント5】 各食品に含まれるタンパク質の量を把握しておきましょう

 1日のタンパク質が40gと指示された場合、肉や魚などの食品のタンパク質を40gではなく、米や野菜なども含めて、食べたものに含まれるタンパク質の合計量が40gということです。タンパク質は体に必要な栄養素ですから、治療用食品などを利用し、なるべく主食からではなく、おかずからとるようにしましょう。

【ヒント6】 カリウムを制限するよう言われたら

 野菜などのカリウムは、水にさらしたり、茹でこぼすことで減らすことができますが、蒸しても減りません。イモ類は茹でてもカリウムは抜けにくい食品です。果物は生よりも、缶詰などを利用し、缶詰の汁は飲まないように。水にさらしたり、茹でたりすることでどのくらい減らすことができるかは、さまざまな資料を参考にしてください。

【ヒント7】 リンを制限するよう言われたら

 リンはタンパク質食品に多く含まれているため、タンパク質制限を実行していれば、リンの摂取量も少なくなります。カルシウム源となる食品にもリンが多いので、カルシウム不足に注意しましょう。

「保存期と透析を導入後では、食事療法の内容も変わります。どんな透析を選ぶかによっても違います。詳しくは主治医か管理栄養士に相談してください。

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