腎臓教室 Vol.63(2012年6月号)

ストップ・ザ・CKD!
CKD(慢性腎臓病)の発症予防・重症化予防に向けて
地域の取り組みを紹介します

 今回の「そらまめ通信」では、地域のCKD対策のなかから、かつて新しく透析に入る患者数が全国平均の1.4倍と最も高い水準でありながら、総合的な対策の結果、75才未満の新規透析患者数を大幅に減少させた(2009年214人→2011年160人)「熊本市」の活動をご紹介します。

1 啓発・発症予防

一般市民への啓発活動の強化

 熊本市では市民にCKDについて知ってもらうため、積極的な啓発活動を展開しています。啓発イベントや勉強会の開催、リスクコントロールが必要と思われる人への個別の保健指導の強化など、さまざまな角度から幅広い対策を実施しています。

熊本市と「健康くまもと21推進市民会議」が共催するCKD勉強会、気づける・学べる・楽しめるCKD『健くま塾』。

動物園やショッピングセンターなど、多くの人が集まるところでCKDイベントが開かれています。

医師や看護師、栄養士や保健師など、医療関係者のための研修会。

発症予防の環境づくり

 また、生活習慣が深く関係しているCKD対策として、生活習慣病を予防する環境づくりにも力をいれています。具体的には、『くまもと減塩美食』をキャッチフレーズに、1食当たりの塩分が3グラム以下の料理やお弁当を提供する店を「健康づくりできます店」として登録したり、家庭でも簡単で美味しい減塩食を取り入れてもらうために、減塩・低カロリーメニューのレシピ集を発行し、調理教室なども開催しています。

このステッカーで「健康づくりできます店」が分かります。

2 早期発見

特定健診に腎機能検査を導入

 自覚症状がほとんどないCKD患者を早期に発見するためには、「特定健診に腎機能の状態を把握できる『血清クレアチニン』と『尿潜血』などの検査項目を追加」。そのうえで、「健診未受診者に対して個別に電話による受診を勧めたり、健診機関からの受診勧奨、保健福祉センターの保健師の地区活動で受診を勧める」など、受診率を高める取り組みをおこなっています。その結果「2009年の特定健診受診者数が1.7倍に増加」と、手応えを感じているようです。

かかりつけ医でのeGFR算出の簡素化

 熊本市ならではの取り組みとして注目されるのが、「衛生検査所の協力を得て、かかりつけ医からの血清クレアチニン検査のオーダー時に腎機能を評価するeGFR値を算出し併記するようにした」ことです。かかりつけ医のeGFRの算出を簡素化し、速やかな診断ができるようになったといいます。

eGFR値:

腎臓がどれくらい老廃物を尿へ排泄する能力があるかを示し、値が低いほど腎臓の働きが悪いということ。

3 悪化防止

CKD病診連携システム

 熊本市のCKD対策の一番の特徴は、『CKD病診連携システム』です。これは、かかりつけ医が潜在患者を早期に発見、速やかに専門医に紹介し、詳しい検査や治療方針を伝達するなど、2人の主治医が連携して診療にあたるシステムです。軽度のCKDの患者さんには、早期に適正な治療を提供でき、中程度の患者さんの悪化や透析に移行することを防止することもできるようになりました。さらにかかりつけ医と栄養士との連携システムも効果がでているようで、「かかりつけ医での専門的な栄養指導が実現したことで、検査値が改善したり、服薬が必要なくなることもある」と、熊本市の総合的なCKD対策は着実に成果を上げているようです。

▼かかりつけ医のステッカー

くわしくは熊本市のCKDのページにありますので、ぜひご参照下さい。かかりつけ医のリストも掲載されています。

熊本市の健康課題CKD(慢性腎臓病)のページ

熊本市役所 健康づくり推進課のみなさん

 生活習慣病からCKDになる人が増えています。生活習慣病の予防はご本人が努力していただくことも大事ですが、それを支える社会環境づくりも不可欠です。たとえば外食のときに減塩のランチが食べられることや、かかりつけ医と専門医との2人主治医制があり安心して診てもらえること、食生活改善や禁煙を協力・応援してくれる家族や友人などがいることなども重要です。みんなで知恵を出し合い、さまざまな予防活動が進められればと考えています。
熊本市役所 健康づくり推進課のみなさん

 CKDの発症予防、重症化予防に向け、全国各地でさまざまな取り組みがされています。なかには、みなさんが参加できるもの、みなさんの病気との付き合い方のヒントとなるようなものもあるようです。各地のセミナーは「腎臓病なんでもサイト」でも紹介していますので、参照ください。
 今回ご紹介した熊本市の取り組みからは、病気を早期に発見すること、腎機能をきちんと知ること、継続的に受診をすること、食事・生活習慣の改善の大切さが改めて感じられます。また、医療者と患者さんだけでなく、家族・友人・周りの環境の協力や応援も重要なようです。
 我々サポート協会も、みなさんの支援ができるよう、様々な情報をお届けしたいと思います。今後も各地の様々な取り組みを、暫時ご紹介していきます。

一覧に戻る