腎臓教室 Vol.65(2012年10月号)

腎臓移植~生体腎移植の流れ~
10月は臓器移植普及推進月間!

 腎臓移植は、末期腎不全の唯一の根治的治療です。日本の腎臓移植のレベルは高く、免疫抑制剤を服用していれば、普通の人と同じように生活することができます。移植月間を機に、腎臓移植についてみてみましょう。

聖路加国際病院 腎臓内科 副医長 長浜 正彦 先生

 腎臓移植には、亡くなられた方から腎臓を提供していただく「献腎移植」と、親族の方から腎臓を提供していただく「生体腎移植」があります。日本は「生体腎移植」が全移植の約90%を占めるほど圧倒的に多いため、今回は「生体腎移植の流れ」について解説します。

生体腎移植の流れ

  1. 親族6親等、姻族3親等の中でドナー候補を探し、精密検査を行う
  2. レシピエントの精密検査を行う
  3. 両者の免疫適合性を調べるために、組織適合性、クロスマッチテストなどの検査を行う

【入院期間】

移植手術の入院期間は移植施設によって多少の違いがありますが、ドナーで約1週間、レシピエントで2~4週間です。

【手術後】

レシピエントは退院後も比較的頻繁に移植外来へ通って腎機能のモニターや免疫抑制剤の調節を行ないます。社会復帰はドナーが1~2ヶ月後、レシピエントは2~3ヶ月後が一般的で、生体腎移植の場合、移植腎の寿命は普通15~20年といわれています。

ドナーとレシピエント

 腎臓を提供する方を「ドナー」、移植を受ける方を「レシピエント」と呼びます。原則として、レシピエント候補には腎不全患者であれば誰でもなることができます。一方で、ドナー候補になるには社会的、医学的なハードルをクリア―する必要があります。

「ドナー」になるには

  • まず社会的には、ドナー候補は、レシピエント候補の親族6親等、姻族3親等の親族縁者でなければなりません。つまり、友人や知人は腎臓提供できないのです。
  • 次に医学的には、ドナー候補は片方の腎臓を提供後も、手術が終われば元の生活に戻ることができるほど「健康」である必要があります。「健康」と大雑把に書きましたが、以前に大病したことがあるとか、現在、医療機関に通院中で常用薬がある方は、原則としてドナー候補にはなれません。このように、生体腎移植ではドナー候補を決めるのが最もハードルが高いのです。

「レシピエント」になるには

 レシピエントは移植手術に耐えられるほどであればよく、末期癌や活動性の感染症がない限り、移植候補になれます。

ドナーとレシピエントとも精密検査を受けます。

  • ドナーもレシピエントも、心臓、肺、消化器、感染症など全身の精密検査をしますので、通常はこの術前検査に数ヶ月を要します。
  • 最終的にはドナー・レシピエントの免疫学的な相性をみる「組織適合性」や「クロスマッチ」で移植可能かどうかを判断します。

 最近は免疫抑制剤が大変に進歩したので、この免疫学的検査の結果によって、移植を断念しなければならないことは稀です。しかし、免疫学的な相性によって、薬剤の用量等を調節します。ちなみに、ドナーとレシピエントが親子などの血縁者であるか、夫婦などの非血縁者であるかによって移植腎の寿命は影響を受けません。また、血液型不適合移植も、かつては成績のよくない移植でしたが、最近は特殊な薬剤や血漿交換などをすれば、血液型適合移植と遜色ない成績となりつつあります。

このように、ドナーが腎臓提供可能で、レシピエントが移植手術に耐えられ、移植後にも問題が起きないことを精密検査で調べ、免疫学的な適合性をみてから、やっと生体腎移植が行われます。

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