腎臓教室 Vol.69(2013年6月号)

「そろそろ透析」といわれたら、
改訂版「腎不全とその治療法」を使ってこれからのことを考えてみましょう

 治療法の選択について、前号では「シェアード・ディシジョン・メイキング」という考え方をご紹介し)、患者さんも医療チームの一員として、自分の意思を伝え関わることが、納得して治療を始めることにつながり、患者さんにとっても、医療者にとっても、満足度が高まるとお伝えしました。
 しかし、いざとなると、ショックで何も考えたくない、何をどう相談して良いのかわからないという方もたくさんいらっしゃいます。そこで、腎臓サポート協会では、患者さんが、医療スタッフやご家族に相談する際にお役立ていただけるよう、冊子「腎不全とその治療法」を大幅に改訂しました。今回は、その使い方についてご紹介します。

実際に書き込むことから始めましょう

 改訂版「腎不全とその治療法」では、書き込み式ページが大幅に増えました。質問事項に沿って答えていくことで、現在の自分の生活を把握し、自分の役割や、今後の希望などを整理することができます。

あなたの生活で大切なことはなんでしょう?

 毎日の生活のなかで、仕事や家事、子育てや介護など、自分がしなければならないことや役割は何でしょうか?趣味や生きがいなど、これからも続けていきたいことは何でしょう?また、旅行や習い事など、これからやってみたいことも積極的に考えてみましょう。
 透析を受けながら、様々なことに挑戦している方はたくさんいらっしゃいますから「もう、できない」と諦めなくて良いかもしれません。

<ポイント>

「大切にしていることは人それぞれ」です。他人にどう思われるかを気にせず、自分なりに大切にしていることがあれば、小さなことでも書いてみましょう!

毎日どのように暮らしていますか?

 毎日の生活リズムも人それぞれです。何時に起きて、何時に寝るのか、食事時間は規則的かなど、毎日の生活リズムを簡単に振り返っておきましょう。また、家事や介護など、基本的な生活に関わることはこのページに記載します。

<ポイント>

質問項目になくても、気付いたこと、伝えておきたいことなどがあれば、余白にメモしておきましょう。

一週間の流れを見てみましょう

 さらに詳しくご自分の生活を振り返るために、生活表を作ってみましょう。曜日ごと、時間ごとに、何をしているのかが分かると、日々の生活と、治療にかかる時間をどう調整していくかを考える目安にもなります。先週の生活でも、今週これからの生活でも良いので、できるだけ具体的に記入してみましょう。1週間分全てを書き込むのが難しい場合は、書ける範囲で書いてみましょう。

<ポイント>

通院や治療に家族の助けが必要な場合は、家族の生活も振り返ってみると良いでしょう。

それぞれの治療のイメージは?

 医師や看護師と相談するときには、冊子を持って行き、治療にかかる時間も聞いて書き込んでみましょう。

<ポイント>

治療にかかる時間は、治療方法や患者さんの状態等によって異なりますので、医療スタッフに聞いてみましょう。

透析治療はどのくらい時間がかかるのでしょうか?

 透析や移植について、自分がどのようなイメージを持っているのか、どの程度知っているか、疑問に思っていることは何かを、確認するためのページもあります。漠然とした心配事もあれば書き出しておきましょう。

<ポイント>

すでに知っていることやイメージ、疑問点を医療スタッフと共有することで、医療スタッフも説明のポイントが把握でき説明しやすくなります。
 今回は、当協会の冊子のご紹介をしましたが、各病院でも様々な方法で、患者さんとのコミュニケーションをはかる取り組みがおこなわれています。質問しよう、相談しようと思っていても、病院に行くと上手く話せない場合もあるでしょうが、文字にしておくことで、意思が伝えやすくなることもあります。「そろそろ透析」といわれたら、改訂版「腎不全とその治療法」を利用するなどして、家族や医療スタッフと一緒に、これからのことについて考えてみてください。

 改訂版に合わせて、当協会Webサイトの『「そろそろ透析が必要です」と言われたら』もリニューアルしました。簡単な操作で冊子と同じ内容のシートが作成できます。ぜひご活用ください。

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