腎臓教室 Vol.72(2013年12月号)

年末年始の過ごし方

 年末年始にはいろいろなイベントが目白押しです。クリスマス、忘年会、紅白歌合戦、年越しと除夜の鐘、初詣、新年会、などなどありますね。腎臓病だからといって何も参加しないと、人生は輝きません。人生を輝かせるには何事にも積極的に参加することです。

でも、腎臓が悪い方は以下のことに少し注意しながら参加しましょう。

  1. 体調管理
  2. 食事の注意
  3. 感染症の注意
  4. 合併症の注意(心不全、高血圧、浮腫、高K(カリウム)血症など)

日本医科大学名誉教授 あだち入谷舎人クリニック 院長
飯野 靖彦 先生

1.体調管理

 透析をしている方はもちろん、透析になっていない慢性腎臓病(CKD)の方も、冬場は体調を崩す時期です。イベントに参加して、暴飲暴食をしたり、夜更かしをすれば、体調が悪くなります。基本的には日常の日課を守り、睡眠時間と休養をとることは重要です。その上で、イベントに参加する時間をとり、元気な人と同じようにとことん付き合うのではなく、時間を決めて楽しんでください。途中で宴会から抜けられないことを心配することはありません。勇気をもって時間が来たら帰宅しましょう。それをわかってくれない人はあなたの体を心配していない証拠です。心ある人は病気のことを心配してくれています。
 透析を受けている方は、もちろん透析は休んではいけません。透析クリニックの職員は年末年始なしで働いていますので、皆さんもいつものように治療に来てください。

2.食事の注意

 ミカンがおいしい季節です。僕が研修医だった40年前に横須賀共済病院の正月当直(若い先生が年末年始の当直をしていました)をしていたときの本当の話です。元旦に救急車で透析患者さんが運ばれてきました。脈は弱く、意識は朦朧としています。すぐに心電図と胸部レントゲン、血液検査などをおこないました。血液検査の結果はすぐにはでないのですが、心電図で異常があり、いつ心臓が止まってもおかしくない状態でした。K(カリウム)が高いと変化する所見です。後で血液検査をみるとKが7.8にも上昇していました。すぐに血液透析を始めて、30分で心電図も正常になり、意識も戻りました。良く聞くと、ミカンを10個いっぺんに食べたそうです。指導力のなさを反省すると同時に高K血症の怖さを味わいました。皆さんも年末年始にはKの多い食品(おせち料理、栗、芋、豆など)がたくさんありますので、注意してください。

3.感染症の注意

 冬場は乾燥して寒くなるため、ウイルスや細菌にとって有利な季節です。外出から帰宅したときだけでなく、一日に何回かは石鹸で手洗いをして、水でうがいをすることをお勧めします。手洗いとうがいでほとんどの感染症はある程度防御できます。風邪のはやる時期なので、十分な睡眠と栄養価の高い食事で免疫力(感染を防ぐ力)をつけましょう。65歳以上の高齢者は可能ならばインフルエンザの予防接種をしましょう。アレルギーのある方は医師に相談してください。また若い方も透析をしていると免疫力が落ちていますので、できればインフルエンザ予防接種をしたほうがいいと思います。さらに高齢者は肺炎球菌ワクチンも接種した方がいいでしょう。

4.合併症の注意

 透析患者さんの場合、感染症は上述した高K血症のほかにもいろいろあります。そのひとつが心不全です。透析患者さんは尿が少ないため塩分や水分が体にたまります(体重増加の多くがこの塩分と水で構成される体液量増加です)。この体液量増加は心臓に負担をかけ、心臓が大きくなり、心臓の筋肉がくたびれてしまいます。その状態が心不全で、必要な酸素や栄養分を体の隅々まで送れなくなります。また、肺や足やまぶたに水がたまり、肺水腫(呼吸が苦しくなる)、足のむくみ、まぶたのむくみなどが起こります。体液量が増加した心不全の特徴は、夜中に寝ていると苦しく、座ると少し楽になる起座呼吸というものです。年末年始には心不全になる方が多いので、このような症状がでたらすぐに担当医に相談してください。  高血圧も塩分や水分の貯留で起こってきます。自宅での血圧測定は定期的に、少なくとも朝と晩に測定してノートにつけてください(主治医にみせると喜びます)。年末年始にいつもよりも血圧が高くなるようでしたら、塩分と水分摂取を減らすようにしましょう。

 いつもの生活パターンを基本にして、年末年始のイベントに積極的に参加して、有意義な人生を創り上げてください。貴方の人生は、貴方が創るのです。医療者はそれをサポートしています。思い出深い年末年始になることを願っています。

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