腎臓教室 Vol.81(2015年6月号)

慢性腎臓病(CKD)*かかりつけ医から 患者さんへのメッセージ

日本臨床内科医会学術部腎・電解質班班長 内藤内科クリニック院長 内藤 毅郎 先生

慢性腎臓病(CKD)の現状

 CKDとは尿異常(タンパク尿など)や腎機能障害が3か月以上続いている状態を指しています。現在、わが国にはこのCKDの患者さんが千数百万人もいると推定されていて、いまや「新たな国民病」とまでいわれています。また腎臓病が長く続いた結果として腎臓がほとんど働かなくなり透析療法を受けている患者さんは総数約31万人、新たに透析療法を始める患者さんは毎年3万人以上もいらっしゃいます。CKD患者さんには脳卒中や心筋梗塞などの心臓血管系トラブルが数多く発症することが知られており「慢性腎臓病は腎臓障害だけでは済まない」ことも知っておく必要があります。CKDは健康診断でおこなわれる尿検査でタンパク尿などの異常により発見されることが多いのですが、初期にはあまり自覚症状がないので、残念ながら受診や精密検査を先送りしてしまう人が多いという現状があります。

腎臓専門医とかかりつけ内科医の連携

 このようにCKDは患者数がとても多いのですが、日本腎臓学会に登録されている腎臓専門医は4,000人余りで、専門医のドクターだけですべての患者さんの治療をおこなうことは困難です。そこでより広く“町の開業医”、“かかりつけ医”の先生方に治療していただく必要がありますが、日本のかかりつけ内科医の先生方は、もともと心臓病や胃腸病がご専門であったりして、必ずしも腎臓病診療に詳しくない先生も多いのが実情です。したがって、それぞれの地域の腎臓専門医と十分に連絡を取り合って治療を進めていく必要があります。一方でかかりつけ内科医の先生方は患者さんの状態を日頃から全般的に把握することができるので、医療だけでなく福祉サービスの面からもサポートしていただけるというメリットがあります。

日本臨床内科医会の活動

 日本臨床内科医会(日臨内)は主としてかかりつけ内科医が所属する全国組織で、47都道府県に約15,000人の会員がいます。日臨内には学術調査や研究・教育をおこなっている学術部があり、腎・電解質班では会員に向けたCKD啓発活動など腎臓病診療の向上をめざした活動をおこなっています。平成24年~25年にはわが国で初めてのCKD診療に関する全国調査をおこない、いまCKD診療がどういう状態になっているかについて地域別に、また医師の専門領域別に、詳しく調査しました。その結果、全国のかかりつけ医がそれぞれの地域で腎臓専門医と良好な関係を築きながらCKD診療に日々ご努力されていることがわかりましたが、問題点もいくつか見つかってきました。一例をあげると、患者さんが診療所を初めて受診された際に、ほぼ全例に検尿をおこなっていると回答した医師は3~4割程度でした。「初診時検尿」の実施率が低いことは、受診率がまだまだ低いわが国の検診事情とあわせて考えると非常に大きな問題で、早期診断の機会を逸してしまう可能性があります。また尿タンパクの定量検査の実施についてもまだ不十分でした。そこであらためて尿検査の重要性を呼びかけるため、平成26年6月に「かかりつけ内科医に向けたCKD診療に関するステートメント」を発表し、各種のマスコミにも取り上げられました。

どういう場合に専門医を受診するべきか?

 日本腎臓学会が医師向けに発行していますCKD診療ガイドには、どういった状態であれば腎臓専門医を受診すべきかについて、次のように記載されています。①尿タンパク量が比較的多い場合(≧0.5グラム/日)、②タンパク尿と血尿が同時に認められる場合、③腎臓機能を表すeGFRが50mL/分以下の場合(註:年齢によって数字は変わる)などです。また腎臓機能が短期間に悪化した場合にも速やかに専門医に相談するように勧められています。こうした紹介基準については医師だけでなく患者さん自身もある程度知っておく必要があると思います。

“かかりつけ医は身近で心強いパートナー”

 CKDは慢性の病気、すなわち長く付き合う必要がある病気ですので、将来透析を受けることになるのではないかといった不安が患者さんを長期間苦しめることになります。「あなたはタンパク尿が続いていてCKDの状態です」といわれたら不安が大きいと思いますが、かといっていきなり大学病院など大病院の腎臓専門医を受診することは敷居が高いかもしれません。日臨内会員をはじめとする“かかりつけ内科医”は全国どこでもみなさんの住んでいる地域に必ずいますので、CKDについて気軽に相談してください。そして必要な場合にはそのお医者さんから専門医に紹介していただいて、検査や指導、治療方法の確認を受けてください。早期に診断し早期から正しい治療を開始することは、CKDの進行を防止するためにきわめて重要です。けっして放置したり先送りしたりしないでください。かかりつけ内科医はきっとみなさんにとって心強いパートナーになってくれると思います。

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