体験談 / 一病息災 Vol.110(2020年4月号)

腎臓病と共にイキイキと暮らす方々に、腎臓サポート協会理事長 松村満美子がインタビュー
(職業や治療法は、取材当時のものです)

特集:腎臓病とともに生きる111人!
インタビューした方々の生き方、そのなかから、6人の現在を紹介!

患者さんの体験談~一病息災~ vol.110

そらまめ通信には、明るく過ごすヒントがつまってる!

草木が芽吹き、明るい日差しに心踊る季節がやってきたはずなのに、自宅で過ごす日々。
「自粛はしても萎縮せず、元気を出そう!」という試みが増えています。そらまめ通信もこんな時こそ、皆さんに元気をお届けしたいと、これまでのインタビューを振り返り、保存期や透析、移植と共に明るく前向きに過ごしている方々の、一部ですが現在をご紹介し、前向きにこの苦難を乗り切るかてにしていただきたいと考えました。

保存期、血液・腹膜透析、移植した方々111人

 2001年に腎臓サポート協会が設立され19年、そらまめ通信では111人の腎臓病の方の話を聞いて誌面とWebサイトでご紹介してきました。腎不全保存期を保っている方14人、血液透析(HD)38人、腹膜透析(PD)29人、腎移植30人の方々です。
 インタビューは腎臓サポート協会のWebサイト「腎臓病なんでもサイト」で読んでいただくことができますし(一部不掲載)、松村満美子の著書「腎不全を生きて」「腎不全でもあきらめない」「続・腎不全でもあきらめない」では、冊子では伝えきれなかった情報や、インタビューした方々がその後どうしているかも紹介しています。

松村満美子の著書

・『腎不全を生きて』 —腎臓病患者5人の軌跡— 詳しくはこちら >>
・『腎不全でもあきらめない』 —強く明るく生きる三二人の物語— 詳しくはこちら >>
・『続・腎不全でもあきらめない』 —明るく強く前向きに生きる30人の闘いの記録—
  詳しくはこちら >>

保存期を長く保つ秘訣がいっぱい

 腎不全保存期を長年保っている方に共通していたことはくよくよしないこと。皆さん前向きに自己管理や食事療法を続けていました。そんなに厳しい食事療法をしなくても、生活を規則正しく保ち、自分で決めた目標に向かって毎日を送ることで、透析導入を40年以上延ばしている方もいました。慢性腎臓病であることが分かってすぐに腎生検を実施、ステロイドパルス療法を受け寛解し、待望の赤ちゃんを産んだ女性もいました。かと思えば、いつまでたっても不摂生な生活を改めることができなく、透析間近まで進行してしまったのを機に、一念発起して徹底的な食事療法を開始し10年以上も透析を導入せず頑張った方もいらっしゃいました。
 保存期を保っている方の話を聞いて感じるのは、自覚症状がなくてもたんぱく尿や血尿を放っておかず、気づいたその時点から生活改善をすることの大切さです。病気が進んでいつかは透析が必要となることも理解したうえで、食事療法や薬物療法を始めることによって、透析導入を遅らせることができますし、透析を導入することなく過ごすことができるかもしれないのです。

血液透析にはいろいろな選択肢がある

 一病息災でご紹介した方々のなかでやはり人数が多いのは血液透析の方、時代によって透析効率や治療を受ける大変さなどは違いますが、先輩患者さんの苦労の上に現在があることを感じます。
 最近では血液透析といってもさまざまなパターンがあります。より長時間透析をすることで身体に優しく十分な透析を受けることができる長時間透析、血液透析にろ過を加え、除去しづらい低中分子たんぱくといわれる物質も取り除く血液濾過透析(オンラインHDF)、自宅で好きな時間に透析ができる在宅血液透析(HHD)、そして腹膜透析と血液透析を組み合わせた併用療法など、病状や生活に合わせて選ぶことも可能になりました。しっかり比較検討して選択した方の話は、これから治療選択をする人や、すでに透析を導入していてより快適にと思っている人にはヒントになるのではないでしょうか。

満足度が高い腹膜透析、ほぼ完全に回復する移植

 自宅で自分でおこなう腹膜透析は、月に1回病院に通えばよく、仕事や趣味を続けやすい治療で、時間をかけて身体にたまった老廃物を除去することから、高齢者にも向いているといわれています。自分の腹膜を利用するため継続期間が長くなると腹膜の状態によって血液透析に移行することになりますが、長い年月続けられないことを理解した上でも、導入者の満足度が高いのが特徴です。インタビューでは腹膜透析をしながらバリバリと仕事をしている様子や、世界各地に透析液を前もって送っておいて旅行を楽しんでいる方、血液透析をするため施設に通っていた高齢者が通えなくなって、腹膜透析をして元気になられたことなどを伝えています。
 一方腎移植は、透析治療がいずれも腎臓の一部の役割しか果たさないのに比べ、唯一の根治治療であり、失われた腎臓の機能はほぼ完全に回復します。免疫抑制剤を飲み続けなければいけませんし、いただいた腎臓が悪くなる場合もありますが、ほとんどの方が健康を回復し、学校に行ったり、社会復帰や旅行、スポーツも楽しめるようになります。
 インタビューした腎移植経験者は皆さん、取り戻した自由を謳歌しながら、ドナー(腎臓提供者)に感謝し、自己管理をきちんとしながら生活をしていらっしゃいました。

お会いした人はみな、とても元気!

 インタビューのたびに驚かされるのは、明るく前向きに生きている患者さんたちの強さです。もちろん、前向きな人たちも最初から前向きだったわけではありません。不治の病に嘆き、悲しみ、もがき、その末に到達した前向きさや明るさでした。そんな強さは、多くの人々に感銘や勇気を与える力を持つようで、お話を聴いている私達のほうがパワーをもらっていたようです。「そらまめ通信は」病気や治療についての情報だけでなく、先輩患者さんたちの生きる力をも伝えてきたことをあらためて実感しました。
 今回は2016年以降にインタビューした方々のなかから6名の方をピックアップして、その後の近況を簡単にお伝えします。

小林 直樹 さん 透析をしながら、管理職としてバリバリ働いています!



福祉や医療の授業で自分が透析をしていることを題材に説明していました。

(Vol.90 2016年12月号 北海道)

液透析を導入して14年目、今は教頭職として、働き方改革推進の筆頭株となり、身障者でも管理職が務められることを、自ら身をもって証明すべく実践中です。
私ごとでは、12年もったシャントが駄目になり、2度目のシャント造作術を終え、新たなステージに進みました。新しいシャントを一日でも長持ちするよう大切にしていきたいと思っています。

小森 光年 さん 夜寝ながら透析するAPDに変え、自由な時間が増えました!



血液透析を勧められましたが、東京在住のお嬢さんの努力で腹膜透析を導入。

(Vol.95 2017年10月号 佐賀県)

腹膜透析を始めて6年、80歳を迎えることができました。この腹膜透析は、私の人生に彩りを与えてくれています。妻、娘、息子、孫、みんなが、私の透析を応援してくれ、みんなの心が一つになっています。
孫の結婚式に東京まで行くこともできました。今でも、週末には妻とドライブを楽しみ、きれいなものを見、おいしいものを食べて、人生を謳歌しています。

森 朋美 さん 献腎待機22年目で脳死の方より献腎移植を受けました。



イベントの司会などで活躍する森さんは在宅血液透析をしていました。

(Vol.99 2018年6月号 神奈川県)

もうすぐ2年になりますが、体調を崩すこともなく順調に過ごしております。これもドナーさんとご家族からの無償の愛と命のリレーのお陰で、言葉では言い尽くせない感謝の気持ちを胸に生きております。透析から離脱し食事管理も緩くなり、つい食べ過ぎて太り洋服が入らなくなってきたので注意をしています。長く続けている司会業の他に、今年は新たな事業に挑戦しようと勉強している毎日です。

中野 健司 さん 保存期44年目になり、勤めも続けています!



主治医のアドバイスで臨床検査技師になり、病気とうまくつきあってきました。

(Vol.100 2018年8月号 東京都)

インタビューのあと体調を崩しましたが、ステロイドの量を調節して大事に至らず、ようやく回復してきました。この時期は気をつけてはいますが、特別なことはしていません。アバウトな自己管理に蓄尿検査を数ヶ月に1度、そのたびに気持ちを引き締め食事などを調節しています。月1回の診察日は、「このままでいこうね」を合い言葉に、明るい気持ちで、日々の仕事、生活を謳歌しています。

岸 忠雄 さん 体調もよく、夫婦一緒のウォーキングで春を楽しんでいます!



公務員として保存期から腹膜透析までを経験。退職後に血液透析を導入。

(Vol.103 2019年2月号 千葉県)

腹膜透析から血液透析に移行して6年目、現在も週3回5時間の透析をして順調です。厳しくはないものの、自己管理は続けています。
食事は女房が管理してくれるので、カリウム、リンは基準値以内、貧血もなく、元気です。俳句とカラオケのサークルがコロナで中止になって少し寂しいですが、女房と一緒に近くの手賀沼まで、15,000歩のウォーキングをしています。

金子 房 さん ついに透析を導入し3ヶ月、だんだん身体が慣れてきたところです。



主治医・家庭医・家族の協力もあり、20年以上、保存期をキープしていました。

(Vol.104 2019年4月号 東京都)

ギリギリで保存期を保っていましたが、昨年暮れに具合が悪くなり緊急透析を導入。今は近所のクリニックで週3回3時間半の血液透析を受けています。慣れていないのでフラフラしたり、終わってからはかなり疲れています。それで透析日の夕飯はお弁当を頼んでいますが、味もしっかりついていて美味しくいただいています。
最近は元の自分に回復しつつあるのを感じています。

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