腎臓教室 Vol.42
腎不全患者の冬場の過ごし方
冬は腎臓が悪くなりやすいといわれている季節です。 今回は冬場をどう過ごすとよいのか、原 茂子先生に解説していただきました。
皆様こんにちは。地球が温暖化しているといわれていますが、 やはり自然のすばらしさですね。季節はめぐって冬の到来です。 お薬やお食事について皆様、ご自分での管理をこころがけていらっしゃると思います。
冬は腎臓の病気が悪くなりやすいといわれる季節です。冬はなぜ腎臓に悪いのか、 悪くならないように腎臓をまもるには、冬場をどのように過ごすとよいのかなど、 お話したいと思います。冬が腎臓に悪い影響を及ぼす理由には、つぎのようなことがあげられます。
その1:血圧が高くなる
その2:むくみが出やすくなる
その3:心臓の病気(心筋梗塞)、脳の血管の病気(脳出血)が出やすい
その4:かぜやインフルエンザにかかりやすくなる
高血圧、むくみ、心不全を合併しないためには?
家庭で血圧をはかっている方は気づかれていると思いますが、夏場に比べますと、冬場では血圧が高くなります。秋から2月ころまで血圧が高くなり、高いほうの血圧(収縮期血圧といいます)、 低いほうの血圧(拡張期血圧といいます)ともに、10~20くらいあがります。
腎臓病の方は、心臓の病気を合併する確率が高く、高血圧は両方の病気を悪くします。
夏場には自然に体の水分や塩分が、皮膚から汗として出ていますが、 冬はそれが少なくなるために、水分や塩分が体の中にたまってきます。 その結果として血圧が高くなったり、むくみが出やすくなったりします。
高血圧になる原因には、冬場には血管が収縮することも関係しています。 さらに高血圧から、脳出血や心筋梗塞を合併しやすくなります。
むくみがひどくなりますと、足のむくみだけではなく、心臓や肺にも水分がたまり、 心不全・肺水腫といって息苦しくなり、入院が必要となる場合もあるのです。
透析の患者さんでは、透析とつぎの透析の間の体重が、夏場にくらべて1Kg前後増加することがあります。
では、どのようなことに気をつければよいでしょうか。スープなど水気の多いものを冬場はひかえるなど、 飲み物の量は少なくするよう心がけましょう。塩分の多い物もひかえることが大切です。 冬になりますと鍋料理の機会が多くなりますが、水分・塩分ともに多いお料理ですから、 腎臓病の方は十分気をつけたほうがよいお料理です。
インフルエンザ、かぜの予防と対策は?
冬はかぜやインフルエンザの流行時期です。腎臓病の方は免疫能が低下 (細菌に対しての抵抗力が弱く、感染を合併しやすい)しているために、 かぜやインフルエンザにかかりやすく、高齢の方では肺炎を合併しやすくなります。そのために腎臓病が悪くなり、さらに肺炎やかぜのときの抗生物質や解熱剤(熱をさげる薬) で、腎臓が悪くなることがあります。腎臓病のかかりつけ医以外の医師にかかられるときには、 腎臓病で治療を受けていることをお話するとともに、自分の腎臓病の程度をあらわす尿素窒素、 クレアチニン、尿の検査結果を持参していくことが大切です。
インフルエンザの予防や、 肺炎予防のための注射を受けておくことも必要です。
かぜやインフルエンザにかからないようにするには、 過労にならないこと、睡眠をしっかりとること、防寒をはかる(寒い外にでるときは暖かくするなど)こと、 インフルエンザの流行時に人ごみや人の多いところに行くときはマスクをして出かけることも こころがけましょう。
年末年始の食事での注意は?
12月、1月は忘年会や新年会など、外食が多くなる季節です。すでにお話しましたが、 とくに鍋料理が多くなります。鍋料理は水分・塩分が多いこと、野菜類が多くカリウムが高いことなどから、 具だけ食べて汁をのまないなど工夫されることが必要ですが、具の中に水分がたっぷり含まれていますので、 腎臓病の方にはおすすめできないお料理です。
また、外食には塩分・蛋白ともに多く含まれていますので、 少なめに食べるなどで対応しましょう。おせち料理もカリウム(栗、芋、くわい、豆類など)、 蛋白質、塩分が多く、あまりおすすめできないお料理です。
透析療法をすることが必要といわれている方、 透析患者さんは、おせち料理はお箸をすこしつける程度にひかえて、いつもどおりの自己管理の 食事療法をおすすめします。
食事や生活に気をつけて、今年の冬場をお元気ですごしましょう!