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腎臓サポート協会とは

「腎臓教室」バックナンバー 67号

腎臓教室

  • IgA腎症の治療に期待される扁摘・ステロイドパルス療法とは?

 IgA腎症の治療として注目されている「扁摘・ステロイドパルス療法」。協会にも質問が多く寄せられています。そこで、今回は、ご専門の先生に「扁摘・ステロイドパルス療法」について解説して頂きました。

東京慈恵会医科大学附属病院 腎臓・高血圧内科
臨床研修センター副センター長 川村 哲也 先生

  • IgA腎症とは

 のどや腸などからなんらかのウイルスや細菌などの抗原が体に入り、これに対してIgA型の抗体ができて腎臓に沈着し炎症を起こすと考えられています。進行性で、見つかってから20年後には30~40%の方が透析導入になることが分かってきました。残念ながら原因は不明で、根本的な治療法はまだ確立されていません。

  • IgA腎症の治療法

 IgA腎症の治療法は生活習慣の改善、食事療法が基本です。それに加えて降圧薬による血圧コントロール、副腎皮質ステロイド薬、免疫抑制薬、抗血小板薬・抗凝固薬などの薬物療法、さらに最近注目を集めているのが、扁桃摘出術(扁摘)とステロイドパルス療法を併用する扁摘・ステロイドパルス療法です。

  • 扁摘・ステロイドパルス療法とは

 IgA腎症の方には扁桃腺(口蓋扁桃)の慢性炎症、すなわち慢性扁桃炎が多くみられ、またIgA腎症の患者さんでは慢性扁桃炎が急に悪くなると尿所見が悪化しやすいことから、IgA腎症には扁桃での感染が深く関係していると考えられています。そこで扁桃を摘出する手術(扁桃摘出術)を受けることで、症状の改善が期待され、実際に改善したという報告が多く寄せられました。
 一方、ステロイド療法は、異常な免疫反応や炎症を抑えるため、IgA腎症で広く用いられている治療法です。特に大量の副腎皮質ステロイド薬を短期間に点滴投与する「ステロイドパルス療法」は、通常量のステロイド薬を長期間内服するのに比べて副作用も少なく有効であることが分かっています。
 この扁摘とステロイドパルス療法を併用することで、それぞれを単独でおこなうよりも効果が高くなると期待されており、IgA腎症の半数以上が寛解するという報告もなされています。
※寛解:病気による症状が好転または、ほぼ消失した状態。再発する可能性もあるため治癒とは異なる。

  • 扁摘・ステロイドパルス療法のデメリット

 扁摘、ステロイドパルス療法ともに、治療に伴うリスクもありますので、扁摘・ステロイドパルス療法を実施した場合のメリットとあわせて考える必要があります。

扁桃摘出手術
 手術に伴う出血と疼痛、全身麻酔に伴う医療事故のリスクがあります。また扁桃は免疫機能が弱い幼児期では病原菌の侵入を防いでくれる働きをしているといわれた時代もありますが、今では扁桃にそうした免疫機能はないとする考え方が主流です。したがって、少なくとも学童期以降であれば摘出しても害はないと考えられています。

ステロイドパルス治療
 大量のステロイドを集中的に点滴静注する(多くは3日連続での点滴投与を1コースとする)治療で、3週間連続で3コース投与する方法と、隔月で3コースおこなう方法があります。どちらの方法でも点滴をおこなわない期間は少量のステロイド薬を内服しますが、6~12ヶ月間で終了します。
 投与方法や期間によって、顔に脂肪がつき満月様顔貌(ムーンフェイス)になったり、にきびが出たり、毛が抜けたりという副作用や、骨粗鬆症、胃潰瘍や糖尿病を誘発することもあります。

  • 扁摘・ステロイドパルス療法はいつおこなうのが良いのか?

 確実な治療効果を得るためには、扁摘・ステロイドパルス療法をおこなうタイミングも重要です。腎症の進行がある程度進むと寛解率は低くなり、CKD(慢性腎臓病)ステージ2では40~50%くらいの寛解率も、ステージ4になると20%程度まで落ち込みます。そこで、血尿のみや軽いタンパク尿などの早期から扁摘・ステロイドパルス療法を開始したほうが良いという意見があります。しかし、前述のようなリスクも伴いますし、早期のIgA腎症の10~20%は自然に寛解・治癒するので、定期的に経過を見るなかで、徐々に血尿・タンパク尿が増えてくるなど尿所見が悪化してきた時点で実施するのが良いと思われます。
 また、従来は、IgA腎症が進行してからはどんなに治療をしても透析導入を遅らせることしかできないと考えられていました。しかし、腎機能が悪くなってからでも、積極的に扁摘・ステロイドパルス療法をおこなうことで寛解に至った患者さんもおられることから、現在、扁摘・ステロイドパルス療法による透析遅延効果についての研究が進められています。腎生検の結果、少しでも急性の炎症が残っている場合は、扁摘・ステロイドパルス療法によって残された腎機能を保てる可能性もあり、実際、クレアチニンが2㎎/dlを超えた方でも寛解に導入できたという報告もなされています。

  • 今後に期待できる扁摘・ステロイドパルス療法

 扁摘・ステロイドパルス療法をおこなっても必ず寛解するとは限らず、血尿が消えない、血尿はなくなったがタンパク尿が残っているというケースもあります。また寛解が得られても、治癒したわけではないので再発の可能性は残ります。が、血尿もタンパク尿も減少し、透析導入までの期間を延ばすという点では有効かもしれません。特に、クレアチニンが1.5㎎/dl以下の場合はかなり期待できます。今後はCKDが中程度以上進行したIgA腎症にどれくらいの効果があるのか、研究結果が待たれるところです。

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